「月の満ち欠け」佐藤正午著

公開日: 更新日:

 小山内堅は、石油元売りの中堅企業に勤める平凡なサラリーマン。同郷の梢と結婚して娘・瑠璃にも恵まれ、ささやかながら幸せな毎日を送っていた。しかし、突然交通事故で妻と娘を失い、たったひとり取り残されてしまった。失意のまま、故郷の八戸に戻った小山内だったが、長い年月が過ぎ60歳を越えた彼のもとに娘の生まれ変わりを名乗る少女が現れる。奇妙な話に戸惑いつつも、その少女と会うことにしたのだが……。「永遠の1/2」で第7回すばる文学賞を受賞してデビューし、2015年には「鳩の撃退法」で第6回山田風太郎賞を受賞した著者による最新の書き下ろし長編小説。

 娘の生まれ変わりを名乗る少女とその母親との出会いを軸に、瑠璃を巡る小山内の過去や、瑠璃の生まれ変わりとの交錯をにおわす奇妙な体験をした人物のエピソードが挿入され、次第に全体像が見えてくる構成になっている。

 欠けた月が再び満月になるかのように、亡くなった人が別の人物になって戻ってきたとしたら、人はどんな感情を抱くのか。その戸惑いと喜びとが、静謐な筆致で描かれている。(岩波書店 1600円+税)

【連載】ベストセラー早読み

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木朗希の選手会脱退に「情けないし、寂しい」 球界に広がった“第2の朗希”への危機感

  2. 2

    中傷動画疑惑に「ナメプ」連発の高市首相に大打撃! 共同通信の作成者証言報道を皮切りにメディア総攻撃開始

  3. 3

    中傷動画疑惑めぐる高市首相「虚偽答弁」の“証拠”出た! 木下剛志秘書の「回答書」公開され万事休す

  4. 4

    東京都内の選挙で自民また手痛い負け…「リベラル一掃を」と鼻息荒かった杉並区長選も暗い先行き

  5. 5

    大谷翔平が負傷して出血…ドジャース指揮官は軽症強調もサイ・ヤング賞に悪影響を及ぼす懸念

  1. 6

    ドジャース大谷6年連続オールスタースタメンに暗雲…建国250周年の地元票が生む“フィリーズ包囲網”

  2. 7

    高市首相に疑惑炸裂で「茂木新総裁」が急浮上 キングメーカー麻生太郎氏とも関係良好、経験値の高さも折り紙付き

  3. 8

    トンチキアイドル枠独占のM!LKが“ポスト嵐”に急浮上! イケメンからインテリまで幅広く

  4. 9

    高市首相、病気を理由に辞任? 囁かれるショートリリーフは麻生指名で「茂木敏充」か

  5. 10

    紙切れ一枚でクビに…怒りに任せて野球用具すべてを詰め込んだバッグごと、ゴミ箱にぶん投げて球場を後にした