「宮沢賢治の真実」今野勉著
中学3年のときに宮沢賢治の作品に引かれた著者は、テレビ局に入社したころ、再び賢治の作品と出合う。彼の詩の中に「猥れて嘲笑める」「凶つのまみ」「秘呪とりて」などの言葉をちりばめた不可解で異様な詩があった。その下書き稿にある「かなしく君が名をよべば」の「君」とは誰なのか、調べていくうちに、著者は「永訣の朝」にうたわれた妹、とし子を死に追いやった事件の真相、賢治の看護師への初恋、同性の友人への恋心などにたどり着く。「冬のスケッチ」にある「あるべきことにあらざれば」は、この恋のことなのか。
テレビの草創期からさまざまなドラマやドキュメンタリーを制作した著者が、修羅を生きた宮沢賢治の真実に迫る。(新潮社 2000円+税)