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「物を売るバカ2」川上徹也著

「バカ」とは愚かなこと。人をさげすむ言葉であるが、一方では社会常識に欠けてしまうほど何かに熱中している状態を指すこともある。今回は、絶対になってはいけないみっともないバカから、愛すべきバカまで、タイトルに「バカ」のついた本をご紹介。

 物があふれる昨今。価格や利便性だけをアピールしても、消費者の心は動かない。そんな間違った売り方をする“物を売るバカ”にならないためには、消費者の感情を揺さぶる「エモーショナルな売り方(エモ売り)」が重要と説く。

 愛知県のペンズアレイタケウチは、年間1000本以上の万年筆を売り上げる文具店。万年筆の試し書きにふさわしいアンティークな机と椅子を設置するほか、初心者のための万年筆講座も開講している。万年筆を組み立てながらその精密な構造を学べるとあって、万年筆ファンが増加。講座の最後に自作の万年筆で自分宛ての手紙を書かせることで、受け取る喜びと共に万年筆体験を思い出すという仕組みだ。

 体験や共創など、エモ売りの7つのキーワードに沿った豊富な実例から、物を売る極意が学べる。

 (KADOKAWA 800円+税)

「投資バカ」荻原博子著

「豊かな老後を送るために」とのうたい文句で、金融機関はもとより国までもが投資を勧めている。しかし、投資とは世界経済が成長しているときにするもので、現金の価値が上がるデフレの現在は、投資市場は決して盛り上がっていない。

 つまり今、バカな投資をすることは決して豊かな老後にはつながらないと、経済ジャーナリストの著者は警告する。本書では、定年までに無借金であることこそが最大の資産防衛であると説き、近づいてはいけない“クズ投資”についても解説している。

 例えば、「毎月分配型投資信託」。毎月の分配金は魅力的だが、実は収益が出ない場合、元本から捻出される仕組み。そのため運用効果が下がり、実際には複利効果など得ることはできないのだ。

 金融機関や国のカモになってはいけない。 (宝島社 760円+税)

「世界でバカにされる日本人」谷本真由美著

 近頃の日本では、「日本スゴイ!」と持ち上げるテレビ番組を頻繁に目にする。日本人が勝手に優越感に浸るのはいいが、外国人から見れば日本は斜陽の先進国のひとつに過ぎない。

 むしろ、嘲笑されている点も多いのだ。

 たとえば、日本の政治だ。景気を刺激しなければならないのに購買意欲を抑制するかのごとく消費税をアップ。少子化で人口が増えず国力が低下すると騒ぐわりに、政治家はその根本原因を数値的に探究しようとせず、効果のある政策を実施しない。

 大学で経済学や統計学を学んだ外国人であれば、日本の政策がおかしいことなど一目瞭然。「日本スゴイ!」どころではなく、日本は世界にとって反面教師にされていると著者。

 現実逃避はもう終わりにしなければならない。

 (ワニブックス 830円+税)

「平成犬バカ編集部」片野ゆか著

「ウチのワンコは世界一!」「こんなに賢い子は他にいない!」。愛犬家なら一度は、いや、毎日のようにこう感じていることだろう。本書は、そんな熱い愛で日本初の日本犬専門雑誌「Shi―Ba」を立ち上げた男の半生を描いたノンフィクションだ。

 男の名は井上祐彦。辰巳出版でパチンコ雑誌の編集者を務めていたが、30代半ばでリストラの対象に。そこで「どうせリストラされるなら最後に思いきり自分の好きな企画をぶつけよう」と企画した。

 井上の最大の癒やしは、愛犬の柴犬・福太郎と過ごす時間。犬なしでは生きられないほどの犬バカを自称しており、犬バカを歓喜させる雑誌なら作る自信があった。

 かくして、犬バカのスタッフが集い、前例のない日本犬専門雑誌の編集部が発足するが……。

 雑誌を飾った柴犬たちの写真も掲載。犬バカ必見だ。

 (集英社 1600円+税)

「ちょいバカ戦略」小口覺著

 情報誌やトレンド誌の記者をしてきた著者は、ヒット商品にはある共通点があるという。それはバカにされがちな「意識低い系」と思われる要素で、ハイスペックで高尚な「意識高い系」要素が必ずしも売れる要因とは限らないのだ。

 たとえば、コンピューター。かつてはコマンドと呼ばれる文字列を入力して操作していたが、それを画面上のアイコンやボタンで操作するように変えたのがMacだ。専門家からは貴重なコンピューターの能力を「分かりやすさ」に使うのは無駄と酷評されたが、結果はご存じの通り。

 ほかにも、顔を描いたらヒットしたUSB、「鼻セレブ」というネーミングに変えてヒットしたティッシュなど実例を挙げながら、ちょっと見はおバカでも、その実、したたかな戦略を分かりやすく解説。

 (新潮社 740円+税)

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