「おやすみの歌が消えて」 リアノン・ネイヴィン著 越前敏弥訳

公開日: 更新日:

 6歳の男の子ザックが、小学校のクローゼットの中に、先生とクラスメートと一緒に隠れているところから物語は始まる。外からは、スター・ウォーズのゲーム音のようなパンパンパンという音が聞こえ、先生は静かにして動かないでと指示したまま身を固くしている。何が起きているのかわからなかったザックだったが、やっと解放された後に知ったのは、銃を持った男が小学校で発砲して犠牲者が出たこと。その犠牲者の中に自分の兄のアンディがいたことだった。

 兄の死によって、大好きな母は悲しみのあまりに変わってしまい、両親の関係も悪化する。幼いザックは兄だけでなく父も母も失ってしまったかのような変化に心を痛めながらも、本で読んだ家族が幸せになる秘訣を実践するのだが……。

 著者は、3人の子を持つドイツ出身のニューヨーカー。本書はデビュー作でありながら、17カ国で版権が取得された。銃乱射事件が絶えない世界で、人は何を感じどう生きるのか、子どもの視点から描いており、センセーショナルなニュースには映らない人間の弱さと温かさを感じさせる家族の物語となっている。

(集英社 2200円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 2

    片山さつき財務相“苦しい”言い訳再び…「把握」しながら「失念」などありえない

  3. 3

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  4. 4

    阪神・佐藤輝明にライバル球団は戦々恐々…甲子園でのGG初受賞にこれだけの価値

  5. 5

    高市首相「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」どこへ? 中国、北朝鮮、ロシアからナメられっぱなしで早くもドン詰まり

  1. 6

    “文春砲”で不倫バレ柳裕也の中日残留に飛び交う憶測…巨人はソフトB有原まで逃しFA戦線いきなり2敗

  2. 7

    阪神・佐藤輝明の侍J選外は“緊急辞退”だった!「今オフメジャー説」に球界ザワつく

  3. 8

    ドジャースからWBC侍J入りは「打者・大谷翔平」のみか…山本由伸は「慎重に検討」、朗希は“余裕なし”

  4. 9

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  5. 10

    古川琴音“旧ジャニ御用達”も当然の「驚異の女優IQの高さ」と共演者の魅力を最大限に引き出すプロ根性