北上次郎
著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「戦場のアリス」ケイト・クイン著 加藤洋子訳

公開日: 更新日:

 第1次大戦中、ドイツ軍が占領している北部フランスで、ひそかに活動を続けていた女性たちがいた。それがアリス率いるスパイ網だった――というのは歴史的事実だが、あまり知られていないと著者あとがきにある。

 本書は、その実話を基にしたスパイ小説で読みはじめるとやめられなくなる。それは人物造形が素晴らしく、構成が巧みだからである。たとえば、話は2つに分かれている。ひとつは1947年のシャーリーの物語だ。彼女は第2次大戦中に行方不明になった、いとこのローズを捜している。で、その消息の鍵を握ると思われるイヴのもとを訪れる。で、イヴと一緒にローズを捜す旅に出る。

 もうひとつは、旅の途中でイヴが語る30年前、つまり第1次大戦中のスパイ活動の日々だ。このイヴという酔いどれの中年女が、アリスに率いられたネットワークで活躍していた女性スパイだったのである。というわけで、2つの話が語られていくが、もちろん最後には合流する。

 この小説が素晴らしいのは、話が圧倒的に面白いこともあるが、なによりもその着地が秀逸であることだ。復讐をなし遂げれば、本当に心の安定は得られるのか、という問題を前にしたときの解決策がここにあるのだ。イヴの復讐を止めるために、シャーリーが取った究極の行動とは何か。その最後の地点まで読者をぐいぐい引っ張っていく強い筆致がホント、素晴らしい。

(ハーパーコリンズ・ジャパン 1204円+税)

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「一軒家」逆転で…「イッテQ!」に意外なリストラ候補が

  2. 2

    国分太一「ビビット」降板…TOKIOに囁かれる“空中分解説”

  3. 3

    大混戦必至の参院東京選挙区 有力美人候補4人は全員当選か

  4. 4

    ソフトBがメジャー1巡目指名19歳獲り 米有望株なぜ日本へ

  5. 5

    新天皇にもやるのか トランプ“ポンポン握手”に外務省恐々

  6. 6

    “マクロ経済スライド”で40代、50代の年金は今後どうなる

  7. 7

    理由は子どもだけか 磯野貴理子“2度目離婚”芸能記者の見方

  8. 8

    いまさら聞けない年金受給 59歳から始める満額もらう準備

  9. 9

    白血病新薬にケチ…命を費用対効果で語る麻生氏に批判殺到

  10. 10

    「嫌いな女」10位に広瀬すず “炎上発言”とゴリ押しアダか

もっと見る

編集部オススメ

  1. {{ $index+1 }}

    {{ pickup.Article.title_short }}

もっと見る