「ポバティー・サファリ」D・マクガーヴェイ著 山田文訳

公開日: 更新日:

 そのむかし「日の沈まぬ帝国」といわれたイギリスの栄光など、もはや伝説のかなた。EU離脱の国民投票にも驚いたが、その後のドタバタほどイギリスの凋落を決定づけたものはないだろう。12日の総選挙の結果を受けて「合意なき離脱」は回避されたが、大局から見た政治状況の理解には岡部伸著「イギリスの失敗」(PHP研究所920円)が役立つ。

 それに対して微視的な庶民の視点を理解するのに役立つのが本書。サブタイトルに「イギリス最下層の怒り」とうたい、スコットランドの貧困地域の崩壊家庭に育った著者の目から見たイギリス社会の現状を描く。

 10代でたまたまマスコミで有名人になったものの、メディアや福祉関係者は彼が政治的な発言をしたとたんにそっぽを向く。結局、世のエリートは、アフリカでサファリ見物するように貧困層の「ポバティー(貧困)をサファリ(見物)」しているだけだ、と痛烈に批判している。

 (集英社 2400円+税)

【連載】本で読み解く激動の世界情勢の行方

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    もしやり直せるなら、入学しない…暴力に翻弄されたPL学園野球部の事実上の廃部状態に思うこと

  2. 2

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  3. 3

    永野芽郁は疑惑晴れずも日曜劇場「キャスター」降板回避か…田中圭・妻の出方次第という見方も

  4. 4

    巨人阿部監督が見切り発車で田中将大に「ローテ当確」出した本当の理由とは???

  5. 5

    「高島屋」の営業利益が過去最高を更新…百貨店衰退期に“独り勝ち”が続く背景

  1. 6

    かつて控えだった同級生は、わずか27歳でなぜPL学園監督になれたのか

  2. 7

    JLPGA専務理事内定が人知れず“降格”に急転!背景に“不適切発言”疑惑と見え隠れする隠蔽体質

  3. 8

    「俳優座」の精神を反故にした無茶苦茶な日本の文化行政

  4. 9

    (72)寅さんをやり込めた、とっておきの「博さん語録」

  5. 10

    第3の男?イケメン俳優が永野芽郁の"不倫記事"をリポストして物議…終わらない騒動