「ポバティー・サファリ」D・マクガーヴェイ著 山田文訳

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 そのむかし「日の沈まぬ帝国」といわれたイギリスの栄光など、もはや伝説のかなた。EU離脱の国民投票にも驚いたが、その後のドタバタほどイギリスの凋落を決定づけたものはないだろう。12日の総選挙の結果を受けて「合意なき離脱」は回避されたが、大局から見た政治状況の理解には岡部伸著「イギリスの失敗」(PHP研究所920円)が役立つ。

 それに対して微視的な庶民の視点を理解するのに役立つのが本書。サブタイトルに「イギリス最下層の怒り」とうたい、スコットランドの貧困地域の崩壊家庭に育った著者の目から見たイギリス社会の現状を描く。

 10代でたまたまマスコミで有名人になったものの、メディアや福祉関係者は彼が政治的な発言をしたとたんにそっぽを向く。結局、世のエリートは、アフリカでサファリ見物するように貧困層の「ポバティー(貧困)をサファリ(見物)」しているだけだ、と痛烈に批判している。

 (集英社 2400円+税)

【連載】本で読み解く激動の世界情勢の行方

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