「人類史マップ」テルモ・ピエバニほか著 篠原範子、竹花秀春ほか訳

公開日: 更新日:

 人類の歴史は古い種から新しい種へと直線的に交代しながら進んできたと思われがちだ。

 しかし、その歴史は限りなく複雑で、現在に至るまで、いくつにも枝分かれしてきた。200万年にわたってホモ属のさまざまな種が拡散し、世界に多様性というモザイク模様を形成した。そのモザイク模様を一色に染めた我々ホモ・サピエンスは、アフリカで最後に生まれた種だった。

 現在では科学的データから、異なる人類種や、ホモ・サピエンスの個体群の多様性の断片が再現できるようになった。人類の物語は、遺伝や個体群、言語の中に刻まれ、どこからやってきて、どのように拡散し、なぜ異なるところと共通しているところがあるのかを教えてくれる。

 本書はそうした人類拡散の歴史を世界地図に落とし込んで解説するビジュアルテキスト。

 約280万年前、最初のホモ属がアフリカに出現。約190万年前には、ホモ・エルガステルが現れる。

 ホモ・エルガステルは、先行のホモ・ハビリスやホモ・ルドルフェンシスとは異なり、完全な二足歩行で頭蓋容量も発達。複雑な社会集団をつくって暮らし、長距離を歩ける能力を備えていたという。

 人類史上初めてアフリカ大陸の外に出た彼らの痕跡は、ヨーロッパや中東、南アジアの海岸沿いなど各地に残る。

 150万年前には、アジアにホモ・エレクトゥスと呼ばれるホモ属の新たな分派が現れる。

 こうした人類の夜明けから、約20万年前のホモ・サピエンスの誕生と拡散の軌跡まで。イラスト地図をはじめ、多くの図版で解説。

 なぜ私たちだけが生き残ったか。自分たちのルーツをたどる壮大な読書体験を提供してくれる本だ。

(日経ナショナルジオグラフィック社 3520円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景

  5. 5

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  3. 8

    三谷幸喜がスポーツ強豪校だった世田谷学園を選んだワケ 4年前に理系コースを新設した進学校

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋