「暮らしの図鑑 民藝と手仕事」暮らしの図鑑編集部編

公開日: 更新日:

 何かと自宅で過ごす時間が増えた昨今、「おうち時間」を豊かにするために、毎日のように使う身の回りの品々を見直してみるのはどうだろう。

 本書は、長く日本人の生活を支えてきた民藝の精神に基づいて作られた暮らしの道具を紹介するビジュアルガイド。

 最初に取り上げられるのは、近年人気を集めている沖縄の「やちむん」。やちむんとは、沖縄の方言でやきもののことで、土の温かみを感じさせる風合いと力強く伸びやかな絵付けが特徴だ。

 暮らしの中で使う日用品に美を見いだす「民藝運動」の父・柳宗悦とともに活動した陶芸家の濱田庄司もやちむんに引かれ、たびたび沖縄を訪れていたという。

 ほかにも、日本の磁器生産を支えてきた九州の肥前地区で、装飾的な器を制作してきた「有田」とは対照的に、簡素に徹してきた「波佐見焼」などのやきものをはじめ、16世紀の終わりに会津藩主の肝いりで制作が始まった「会津漆器」や岩手県浄法寺の「浄法寺塗」などの漆器、長野県の「籐細工のかご」、栃木県の「和箒」、和歌山県の「棕櫚のたわし」、大阪府の「トタンの豆バケツ」、日本三大うちわのひとつ千葉県の「房州うちわ」など。44種類もの道具に加え、人々の暮らしに寄り添ってきた郷土玩具17種が勢ぞろい。雑貨好きなら見ているだけでワクワクすることだろう。

 さらにこうした品々を次の世代につなぐために、生産者と消費者の「つなぎ手」として奮闘するショップの店主らに民藝の楽しみ方や選び方を学ぶ。

 また、国産漆最大の産地である浄法寺や、波佐見焼の窯元が集まる長崎県の中尾山などの産地や、工房を訪ねる旅のコラムなど、立体的な編集で日々の生活を豊かにしてくれる民藝と手仕事の魅力を教えてくれる。

(翔泳社 1800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景

  5. 5

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  3. 8

    三谷幸喜がスポーツ強豪校だった世田谷学園を選んだワケ 4年前に理系コースを新設した進学校

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋