「専門医が教える 新型コロナ・感染症の本当の話」忽那賢志著

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 新型コロナウイルスの日本上陸直後から最前線で治療にあたってきた、国立国際医療研究センターの国際感染症対策室医長を務める著者。激務の合間を縫って「Yahoo!ニュース個人」で新型コロナに関するエビデンスに基づいた情報を多数発信し、高く評価されてきた。本書では、自身の現場での経験と最新のデータをもとに、新型コロナおよび日常の中の感染症について分かりやすく解説している。

 新型コロナの“非常識”な性質として著者が挙げるのが、発症前から強い感染性(うつりやすさ)があること。インフルエンザでも感染性のピークは発症直前の1日前、SARSの場合は発症から10日ほど経ったころだという。ところが、新型コロナは発症の3日前から感染性のピークがあり、症状が出たときにはすでに多くの人に感染を広げている可能性が高い。だからこそ、無症状の人でもマスクを着用し感染を広げないことが必要だと説く。

 治療に関してはまだ特効薬がないが、著者が取り組みアメリカでも20年8月に緊急承認されているのが「回復者血漿(けっしょう)療法」。特定の感染症から回復した人の血液から血液成分を取り除いた血漿の中には、ウイルスなどの病原体を不活性化する抗体が含まれており、これを患者に投与するというもの。この治療法はエボラ出血熱やSARS、MERSの感染者にも行われてきた歴史を持ち、著者のセンターでも安全性の評価を進めているところだという。

 子供が感染しにくい理由、院内感染はなぜ起きてしまうのか、ワクチンはどれだけ有効なのか、PCR検査の検査陽性率の捉え方、そして信頼できる情報の見極め方などについても解説。コロナ禍を乗り切るための知識が詰まった必読の書だ。

(幻冬舎 990円)

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