赤神諒(作家)

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2月×日 教壇に立って二十余年。法学の講義で学生の関心を惹こうと、渾身のジョークやエピソードを投げても、教室は静まり返っている。打率1割台の貧打に喘ぐ我が身は、小説家としても「隠れた名作」を量産するばかりだ。

「面白さ」とは、一体何なのか。

 その答えを探ろうと、話題の三宅香帆著「『話が面白い人』は何をどう読んでいるのか」(新潮社 1078円)を手に取った。

 著者は言う。「面白さ」の源泉は、芸人のような話術ではなく、事象を読み解く「解釈」にある、と。紹介される比較、抽象など5つの技術は、法学者が法律判例や学説を分析する営み、あるいは作家がさまざまなテーマとモチーフを物語に昇華させる業にも似て、なるほどと膝を打つ。

 実際、本書では「面白い」実践例が怒涛のように挙げられている。だが、その背後には、著者の膨大な読書量と、それにより培われた高い言語化能力という「基礎体力」がある。「プチ筋トレ健康おたく」を自負する者としてたとえるなら、本書はまさに「知的マッチョ」によるバルクアップ(筋肥大)の記録であり、一朝一夕にはいかない地道なトレーニング指南書だ。

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