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佐々木常雄東京都立駒込病院名誉院長

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

意識がなくなる直前まで俳句を作り続けた患者さんがいる

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 がんが再発した、あるいは、がんが治療に抵抗したことで「不治」だと判断された患者さんは医師からその状況を知らされた後、どう病気と闘うのでしょう? どう生きられるのでしょう? どう安寧な心で過ごせるのでしょう? 「日本人は死生観ができていない。死の勉強が必要だ」という医師もいますが、それは本当でしょうか。死の勉強をすれば死の恐怖を克服できるのでしょうか。

 悪性リンパ腫の中で最も悪性度の高いタイプに罹患し、1年2カ月にわたって闘ったW君(29歳)のお話です。悪性リンパ腫は骨髄にも浸潤し、高度な貧血と発熱を繰り返していました。

 勤めていたIT企業を休職して大変な病苦と闘うことになったW君に向け、父親は思いつきで「歳時記」を勧めました。長い文章を追う読書もつらいだろうと考えたからです。それが、W君にとって俳句との出合いになりました。

 W君は長い入院生活、長い闘病生活の中で、たくさんの俳句を作りました。病状は次第に悪化してつらさが増していったのですが、それでも俳句への熱も増していったようでした。そして、ついには週刊誌やテレビなどいくつもの俳壇で入選するようになったのです。 その頃、W君の病室には自分の俳句が掲載された週刊誌などがベッドに置いてあり、私が病室を訪れたときは必ず俳句の話になりました。

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