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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

血圧130以上の治療するかは副作用とコストの検討が必要

公開日: 更新日:

 日本人の上の血圧の平均が約130㎜Hgというのが最新の調査結果です。

 テレビコマーシャルの「130は血圧高めです」という指摘は妥当なところがあり、それに照らし合わせれば日本人の半分が脳卒中などのリスクが高いということになります。

 ただそれはあくまでリスクの話で、120未満まで降圧薬の治療で血圧を下げてどうなるかの研究が不足しているため、薬を飲んだほうがいいかどうか、現時点ではよくわかりません。さらに、120未満まで下げて脳卒中などが予防できたとしても、それでもまだ治療すべきかどうかは、はっきりしないところがあります。副作用の問題があるからです。脳卒中のリスクを半分にしても、副作用でがんが2倍になっているようでは、治療の意味はないからです。

 そのうえコストの問題もあります。130以上の人に降圧薬を保険診療で認めるとすると4000万人程度に治療が必要となり、最も安い薬でも1錠10円程度ですから、薬剤費だけでも年間1500億円近い負担が生じます。1錠100円の薬を使えばこの10倍です。これほどのコストに治療効果が見合うかどうかはまたまた別の検討が必要でしょう。

 130の血圧高めを治療するかどうかは、まずリスクであることが明確になったうえで、治療効果があり、かつそれが副作用を上回り、コストに見合ったものであるかどうかが確認されて、ようやく治療を医療保険で認めて安価で提供しようとなるのです。

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