著者のコラム一覧
小宮孝泰

1956年、神奈川県小田原市生まれ。明治大学卒。80年、渡辺正行、ラサール石井と「コント赤信号」でTVデビュー。91年に佳江さんと結婚。2001年、31歳の佳江さんに乳がん発症。12年に永眠。今年9月に、出会いから別れまでの出来事をつづった「猫女房」(秀和システム)を上梓。

<8>「闘病」と言わない 病気を受け入れる心境に達していた

公開日: 更新日:

 生身の佳江さんの叫びにも似た声だ。小宮さんは少し間を置いてから続けた。

「怖かったんでしょうね。あんまりそういうことは言わなかったのですが、がんというもの自体への恐怖ではなく、……なんかその、……終(つい)の棲家(すみか)も見つけていないのに病気になってしまったとか、共働きという形を選ばなかったため、今後の家計がどうなるのかというのもあったろうし、それにやっぱり死への不安も加わったのだと思います。あるノートには『どうしてこんなことになったの。どうしてこんなことになったの』と、ずっとそればかりつづっていた箇所がありました」

 とはいえ、最終的には死への恐怖は本人自身にしかわからないものだ。小宮さんは母の定子さん(享年83)も十二指腸のがんで亡くしている。主治医は全摘手術を推奨したが、小宮さんと佳江さんは高齢患者の外科手術がどれだけ体に負担がかかるのかを知っていたし、術後のQOL(生活の質)も考慮し、バイパス手術を勧めた。患者当人の意思は蚊帳の外になり家族で意見が割れていた時、定子さんは「私が痛いところは、私にしか分からないの。どうするかは私が決める」と言ったという。

「最終的には部分切除に決まりました。病気で苦しんでいるのは本人です。『がんばれ』とかあまり言わない方がいいのかもしれません」

 小宮さんは納得したかのようにこう呟いた。 =つづく

【連載】がん発症の妻にしてあげた10のこと

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  2. 2

    渋野日向子に「ジャンボ尾崎に弟子入り」のススメ…国内3試合目は50人中ブービー終戦

  3. 3

    ソフトバンクは「一番得をした」…佐々木麟太郎の“損失見込み”を上回る好選定

  4. 4

    沢口靖子「絶対零度」が月9ワースト目前の“戦犯”はフジテレビ? 二匹目のドジョウ狙うも大誤算

  5. 5

    巨人・桑田二軍監督の電撃退団は“事実上のクビ”…真相は「優勝したのに国際部への異動を打診されていた」

  1. 6

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  2. 7

    国分太一が「世界くらべてみたら」の収録現場で見せていた“暴君ぶり”と“セクハラ発言”の闇

  3. 8

    恥辱まみれの高市外交… 「ノーベル平和賞推薦」でのトランプ媚びはアベ手法そのもの

  4. 9

    後藤真希と一緒の“8万円沖縄ツアー”に《安売りしすぎ》と心配の声…"透け写真集"バカ売れ中なのに

  5. 10

    沢口靖子も菅田将暉も大コケ不可避?フジテレビ秋ドラマ総崩れで局内戦々恐々…シニア狙いが外れた根深い事情