1回のPCR検査陽性で全員隔離は正しかったのか…京大医生物学研究所准教授に聞く②

公開日: 更新日:

 35年以上、動物ウイルスを研究し続けてきた学者の立場から、新型コロナウイルス感染症の流行初期からその性質と対策について持論を発信し続けている京都大学医生物学研究所の宮沢孝幸准教授。一部の人がコロナ禍で感じてきた「新型コロナは少し騒ぎ過ぎではないのか」という思いを、科学的に説明し続けたことでも知られている。その宮沢准教授が最近出版した「ウイルス学者の絶望」(宝島社新書)が話題だ。その中でも述べている通り、宮沢氏は抗原・PCR検査への無理解が騒ぎを大きくしたのではないか、と言う。

「ウイルスに対する無知が新型コロナ騒動を大きくした原因ですが、中でも問題だったのは、抗原検査やPCR検査といった検査のことを国民に理解させないまま、1回の検査で判断して陽性者を全員隔離したことです」

 新型コロナウイルスの検査には抗原検査とPCR検査がある。前者はウイルスのRNAに結合しているNタンパク質を直接検出する。一方、後者はNタンパク質の設計図が書いてあるmRNAウイルスを調べる。

「どちらもウイルスのNタンパク質を直接あるいは間接的に検出することでウイルスの存在を証明しようとしているのですが、問題はそれが感染性のある生きたウイルスの存在証明には必ずしもならないことです。抗原検査は、他の病原体などに反応してしまうことがあり、PCRはコンタミネーションによる偽陽性がつきものです。また相当数のウイルス粒子がないと感染性を有しません。感染によって粘膜面で抗体が出来ていれば、ウイルス粒子は抗体に包まれて感染性を失います。にもかかわらず、1回のPCR検査で陽性となれば全員隔離して社会を混乱に陥れた。ウイルス研究者はこうしたウイルス検査の危険性を知っています。現場の声を知ってか知らずか、当時、上に立って指示する人たちがその認識がなかったことは残念でたまりません」

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    【原田真二と秋元康】が10歳上の沢田研二に提供した『ノンポリシー』のこと

  3. 3

    カーリング女子フォルティウスのミラノ五輪表彰台は23歳リザーブ小林未奈の「夜活」次第

  4. 4

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  5. 5

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  1. 6

    福山雅治&稲葉浩志の“新ラブソング”がクリスマス定番曲に殴り込み! 名曲「クリスマス・イブ」などに迫るか

  2. 7

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 8

    松岡昌宏も日テレに"反撃"…すでに元TOKIO不在の『ザ!鉄腕!DASH!!』がそれでも番組を打ち切れなかった事情

  4. 9

    年末年始はウッチャンナンチャンのかつての人気番組が放送…“復活特番”はどんなタイミングで決まるの?

  5. 10

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった