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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

見栄晴さんは偽陽性でホッ…PET検査が“万能”ではない根拠

公開日: 更新日:

 ブドウ糖の代謝を利用しているといっても、代謝が促進されている再発がんは数ミリをとらえることもよくありますが、取り込みが少ない早期がんは判断が難しい。PETにも、得手不得手があるのです。

 苦手の代表が胃がんで、特に早期の胃がんは分かりません。胃カメラが最も優れています。腎臓がんや膀胱がん、前立腺がんなども、PETが苦手ながんです。

 PETで早期がんが見つかりやすいのは、大腸がんと甲状腺がんですが、甲状腺がんはこの連載でも何度か取り上げているように過剰診断、過剰治療の問題があります。つまり、見つけなくてもいいがんを見つけることで、不要な手術などが行われ、それによって患者さんは後遺症で苦しむ恐れです。

 国立がん研究センターのがん予防・検診研究センターは、ある年のがん検診でのPET検査陽性率を解析。がん総合検診を受けた3000人のうちがんが見つかったのは約150人でしたが、PET検査で陽性となったのはわずか15%でした。PETは85%を見逃したことになります。

 PET検査は万能ではありません。早期発見を目指すがん検診には不向きということです。

 今回の見栄晴さんのPET検査で見つかった病変は偽陽性でしたが、PETは再発や転移を見つけることを目的として使うべきです。

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