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新井平伊順天堂大学医学部名誉教授

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

「軽度認知障害」と「軽度認知症」…インフルに例えるなら微熱の段階か発症後か

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年間16~41%がMCIから健常レベルまで戻れる

 図を見てください。健常者、SCD(主観的認知機能低下=軽い物忘れがあり、自分だけが気づいている段階)、MCI(軽度認知障害)の間は相互方向を向く矢印ですが、MCIから軽度認知症の先は一方向の矢印です。

 これが示しているのは、MCIの段階で適切に対処すれば、1段階.2段階前へ戻ることが可能だということです。生活習慣の改善などで、MCIから年間16~41%が健常な段階まで戻れるという報告もあります。

 MCIから先も、一方向の矢印とはいえ、次の段階への移行を遅らせることはできます。また、MCIから軽度認知症へ移行する人は、だいたい年間5~15%といわれていますが、一昨年、昨年とアルツハイマー型認知症の新しい治療薬が承認されており、MCIや軽度認知症が対象となっています。MCIの段階で新薬を使い始める人が増えれば、「年間5~15%」という数字も今後変わってくる可能性は大いにあります。

 次の段階へ移行しない・移行する時間を遅らせる薬以外の対策としては、どの段階でも共通しています。

 糖尿病や高血圧脂質異常症といった生活習慣病があればそれらの治療は欠かせませんし、睡眠は十分に取るべきです。難聴や視力低下があれば補聴器、眼鏡で補い、40歳以上でリスクが高くなる緑内障(日本人の中途失明原因第1位)については、定期的な検査で早期発見に努める。

 認知症対策に非常に有効で、しかし年を取ってから始めるのは、ややハードルが高いのは、人との交流でしょうか。特に、現在、人間関係は仕事上のものがほとんどという人は、定年退職後を見据えて、今から少しずつ動いた方がいいでしょう。

「50歳を過ぎたら、定年退職まであっという間だった」と話すのは東日本在住の男性(65)。「仕事がなくなった途端、やることがなくなってボケるのも嫌だな」と、50歳の時、近所に小さな畑を借り、野菜を育て始めました。

 これまで仕事の話しかしなかった取引先に、たまたま野菜作りの話をしたところ、実は相手も土いじりが趣味で話が盛り上がり、情報交換をするように。いつしかともに飲みに行くようになり、家族ぐるみの付き合いにまで広がりました。現在、年に数回は会い、旅行にも一緒に出かける仲。

 認知症対策は、心身を健康にし、日々の生活を彩り豊かにすることなのです。

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