歩行リハビリで「下肢装具」が欠かせないのはどうしてか
一方、股関節から上の上半身は、歩行リハビリ訓練を担当する理学療法士(PT)が補助してハンドリングでコントロールします。これにより、麻痺が強くても立って歩く、攻めのリハビリが実施できるようになるのです。このため、当院の全理学療法士の基盤は、長下肢装具歩行訓練を一人で上手にできるように習得することです。そうすることで、当院を卒業した理学療法士が全国で患者さんの人間回復に貢献できると考えています。
患者さんを立たせて、歩かせることによって、意識が向上していきます。地面に踵をつけ、膝を伸ばし、股関節を伸ばし、脊椎を伸ばし、姿勢を整えて立つと、全身に重力がかかり、脳機能への刺激が増えて目が開いてきます。さらに、「イチ、ニ、イチ、ニ」といったリズムで声掛けしながら歩くリハビリを続けると、患者さんの中にもリズムが生まれ、声が出てくるようになります。また、立って歩く時間を増やすことによって、心肺機能が確実に向上し、体力もついてくるのです。
こうした歩行訓練を繰り返すことで、筋力と体力が上がってくると、どんどん覚醒状態が良くなって頭も回転するようになり、声もしっかりしてきます。すると、口から食べるという摂食嚥下機能が向上して、上手にのみ込みができるようになります。立って歩くことにより、すべてがうまく回り始めるのです。そのため当院では、回復できると判断した、立位歩行ができない重症の患者さんには、長下肢装具を使った歩行訓練が必須であると考えています。