(35)高齢家族がいれば誰でも、今、この瞬間、介護が始まる可能性
それにしても、こういった情報の存在を、私は母の施設を探すことになるまで知らなかったし、知ろうともしなかった。事前に興味を持てと言われても難しかっただろう。実際、多くの人がそうなのではないかと思う。介護というテーマは、誰にとってもいつか訪れる可能性があるにもかかわらず、それが自分自身に関係してくるまでは、関心の対象にはなりにくい。
「介護は突然始まる」と言われる。私自身もそうなった。しかし、親にはいつまでも元気でいてほしいと思うあまり、いつか「介護者」という状態になることを想像する人は少ないように思える。高齢の家族を抱える人は誰でも、今、この瞬間に介護が始まる可能性がある。それだけでも意識しておいたほうがよいと思っている。 (つづく)
▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」。