脳腫瘍で手術後、聞き取れないほど言語不明瞭となり認知機能も低下
認知症が疑われたとき最初に区別する病気のひとつが脳腫瘍
脳腫瘍とは、頭蓋骨の内側にできる腫瘍のことです。頭蓋内から発生した「原発性」とほかに発生したがんが頭蓋内に転移した「転移性」があります。
原発性脳腫瘍の悪性度はWHO(世界保健機関)が定めた4段階で表します。大別すると、グレード1が良性、グレード2が軽度悪性、グレード3が中等度悪性、グレード4が高等度悪性となります。
脳腫瘍は種類が多く、WHOの分類では良性や転移性も含めると100種類を超えています。種類によって頻度が多いものからまれなものまでさまざま。悪性度や平均寿命も種類によってかなり違いがあります。比較的多いものでは膠芽腫、星状膠細胞腫、悪性リンパ腫が挙げられます(表参照)。
脳は、部位によって担っている機能が異なります。そのため、脳腫瘍ができた場所によって症状も異なります。脳腫瘍と診断され手術を受けた友人のご主人(前出)のように、言語障害で発見に至るケースは多いです。なお、言語障害には、口や舌が自在に動かせないために言葉がうまく出ない・発音がうまくできない「構音障害」、言葉を理解できるが思ったように言葉が出ない・言葉を理解できず意味のある言葉を話せない「失語症」、読み書きができなくなる「失読・失書」があります。
ほかの症状としては、手足のマヒ、認知障害、頭痛やめまい、てんかん発作、意識障害、吐き気・嘔吐など。症状がなく、脳ドックなどでたまたま見つかるケースもあります。
脳腫瘍の検査では、造影剤を注射して腫瘍をはっきり分かるようにしCT、MRIを行います。カテーテルを用いた脳血管撮影検査を行うこともあります。これらで大まかな診断を行い、手術で腫瘍を摘出し、病理医が詳しく調べます。
たとえば、腫瘍を摘出し生検で悪性リンパ腫と判明したとすると、この種類は、ほかのものと異なり、手術による摘出度と生存期間との間に関係がないため、それ以上の腫瘍の摘出は行いません。そして、化学療法を行います。また、膠芽腫という種類であれば、悪性度が高い脳腫瘍ということもあり、できるだけ多くの腫瘍を手術で取り除きます。しかし完全に取り切るのは困難であるため、術後に放射線治療と化学療法を組み合わせます。
一方、良性の脳腫瘍は基本的には手術で全摘できることが多いですが、腫瘍の場所によっては、脳の機能に障害が残ることもあります。
いずれにせよ、認知症が始まったと疑われたときに、最初に区別すべき病気のひとつに脳腫瘍があるということもポイントです。