著者のコラム一覧
中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

国立がん研究センター公表の「5年純生存率」…多くのがんで改善傾向

公開日: 更新日:

 実は、全がん協のデータは相対生存率を用いていて、国際的に算出される数値の過大評価が問題となっていました。そんな流れから最近は、世界的にも純生存率を使用する流れになっていて、今回の国立がん研究センターの数値も5年の純生存率です。

 全がん協の数値に比べて今回のデータがやや低いのは、その影響が考えられますが、純生存率はデータの更新を重ねていくと、改善する傾向があります。実際、前回に比べると、多くのがん種で数値が向上しました。たとえば、難治がんの代表・すい臓がんは、6.0%ほどだった前回から10%ほどにわずかでも数値が改善しました。

 長くフォローするにつれて改善傾向が見られるのは、医療技術の進歩などが反映されるためで、すい臓がんもそのひとつ。当初、切除不能とされたがんに抗がん剤の投与をすることで腫瘍が縮小して安定したら、根治を目指す手術が行われるようになりました。この手術はコンバージョン手術と呼ばれていて、治療成績の向上に一役買っているのです。

 93年と15年の比較では、男性は前立腺がんが35ポイント改善したほか、多発性骨髄腫と悪性リンパ腫は20ポイントほど改善しました。女性は悪性リンパ腫、肺がん、多発性骨髄腫が20ポイント前後の改善となっています。

 がんの生存率の改善には、治療法の進化に加え、早期診断の割合、医療アクセスへの変化なども影響しますから、データの背景に注意してチェックすることが大切です。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高市首相が招いた「対中損失」に終わり見えず…インバウンド消費1.8兆円減だけでは済まされない

  2. 2

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  3. 3

    現行保険証の「来年3月まで使用延長」がマイナ混乱に拍車…周知不足の怠慢行政

  4. 4

    長女Cocomi"突然の結婚宣言"で…木村拓哉と工藤静香の夫婦関係がギクシャクし始めた

  5. 5

    「NHKから国民を守る党」崩壊秒読み…立花孝志党首は服役の公算大、斉藤副党首の唐突離党がダメ押し

  1. 6

    国民民主党でくすぶる「パワハラ問題」めぐり玉木雄一郎代表がブチ切れ! 定例会見での一部始終

  2. 7

    ドジャース大谷翔平が目指すは「来季60本15勝」…オフの肉体改造へスタジアム施設をフル活用

  3. 8

    男子バレー小川智大と熱愛報道のCocomi ハイキューファンから《オタクの最高峰》と羨望の眼差し

  4. 9

    長女Cocomiに熱愛発覚…父キムタクがさらに抱える2つの「ちょ、待てよ」リスク

  5. 10

    【武道館】で開催されたザ・タイガース解散コンサートを見に来た加橋かつみ