寿司 常(大阪・天神橋)舟形にこだわるバッテラ発祥の店
バッテラを辞書で調べると、寿司飯の上に締めサバをのせて箱型で押し固めた寿司とある。ただ元来は魚がサバではなく、コノシロだったことや、箱型ではなく、舟形だったことを知る人は少ないだろう。天満天神繁昌亭のはす向かいにある「寿司常」は、バッテラ発祥の店。今でも名物のバッテーラ(900円)を食べに訪れる人が多い。
バッテラを誕生させたのは、同店の初代・中恒吉さん。大阪湾で揚がるコノシロの使い道を相談されて、姿寿司を考えたのがきっかけ。コノシロを三枚に卸して半身を姿寿司にして出したところ人気が出たそう。
最初は布巾締めで作っていたが、それだと時間と手間がかかることから押し型を考案した。コノシロの頭と尾を落とし、魚形に身と寿司飯を入れ、押して抜いて提供していたようだ。それを見た客が「バッテーラ」と発したためにそんな名がついた。
バッテーラはポルトガル語で小舟の意。魚形だったつもりが、その客には舟形に見えたのだろう。
「コノシロは供給が安定しないのでサバに代わり、舟形だと先端が乾きやすいので白板昆布で乾きを防止するとともに使いやすい箱型に変化していったようです」と4代目の石川里留さんは話していた。ちなみに奥様の富美子さんが中恒吉さんの玄孫にあたり、代々「寿司常」を営む血筋になる。「締めサバは塩加減が難しい。季節でも違うし個体差もあるのでそこを気にしながら代々伝わるレシピに基づいて作っています」と現在も舟形を使ってそれを作り続けている。
「寿司常」には、バッテーラセット(2900円)もあるが、初めての人はにぎりやバッテラ、造りが味わえるおまかせコース(8000円)をお薦めする。