夢の田舎暮らしは幻想…「食・医療・運動不足」の落とし穴
千葉県に爪痕を残した台風15号によってのどかな田舎暮らしのイメージが変わった人もいるはずだ。地方移住の際に気候や現地の地形、人間関係について入念に事前調査しなければならないが、生命や健康に直結する部分も詳しく調べたい。「田舎暮らし」イコール「健康的な暮らし」というのは幻想に過ぎない。
まず田舎暮らしは運動不足と直結する。車移動が基本だから、都会のように最寄り駅まで歩いたり、乗り換えの際に階段を上り下りする機会も少ない。農業目的の移住者ら以外は運動不足になる可能性が高い。また都会にいるうちは、自然の中での散歩に憧れていても、現実の田舎の森には季節によってはブヨやアブなど害虫もたくさんいる。また場所によっては熊と出くわすことすらある。歩きたくなくなる理由は余りあるほどだ。
■最寄りの耳鼻科は40キロ先
そして、病気になったときの医療体制も都会のようにはいかない。大概の市町村には公営の病院や診療所があるものの、非常勤の医師が多く、診療時間は午前中のみが普通。科によって曜日が限られていたりで、具合が悪くなったときにすぐかかるというわけにはいかないこともままある。
特に不足を感じるのは皮膚科、耳鼻咽喉科などの専門医だ。人気の移住先である新潟県湯沢町でも耳鼻咽喉科のクリニックは一番近いところでも40キロ以上離れた魚沼市だった。
そして、その限られた皮膚科や耳鼻咽喉科はアトピーや花粉症の患者でひどく混雑している。ちなみにアレルギーの子供の病状改善のために田舎暮らしをという方は、移住前にその環境が本当に子供のアレルギーにとって良いのか、しばらく滞在しないうちに決めてはいけない。田舎にもアレルギー患者は大勢いる。そして、杉やブタクサなどのアレルゲンはむしろ都会より身近に、大量にある。改善どころか悪化する恐れもあるのだ。