ノウハウに基づく診療が増加傾向…「エビデンス」を信じると高くつく
私が飼い主さんの気持ちや預かった動物の気持ちを考えて、治療法や手術の方法を選択するのはこの教えがベースになっています。
■企業体の動物病院が増加
師匠や私のような個人事業主の動物病院は減少傾向で、増えているのは企業体の動物病院です。こうした病院の若手は学会や勉強会に参加。病院の方針もあり、学会などのノウハウに基づく診療をする傾向になっています。病院が実施する勉強会は、統一した診療マニュアルをすり合わせる機会でもあるようです。
そこで重要なのが、エビデンスに基づく治療。「検査、診断、治療」が基本的な考え方で、私が教えられたような「経験からの判断や診断的治療」を重視する獣医師は減っています。
そんな企業体動物病院は働き方改革が浸透し、8時間勤務・残業ナシ・週休2日制が定着。個人事業主の動物病院は給与が同レベルでも、勤務条件を同レベルにできず、若い獣医師は企業体に流れますが、そんな企業体の系列が盤石かというとそうでもありません。
先日、企業体の系列病院から「休診日だったので」と流れてきた患者さんがいました。光線過敏症がよくならないということで2カ月に3回の受診で10万円ほどをかけたそうですが、よくなっていませんでした。マニュアルで検査を重ねる弊害がこの治療費の高額化です。当院は、初診料のほか薬代2500円のみ。この飼い主さんは「こんなに安くていいんですか」と驚いていました。