「常識外のプレー」 菅野徳雄氏がA・パーマーの死を悼む
「ああいうゴルファーは二度と現れないでしょうね……」
こう語るのは、アーノルド・パーマー(享年87)の突然の訃報に肩を落とすゴルフジャーナリストの菅野徳雄氏だ。菅野氏が一番印象に残っているのは、昭和41年に東京よみうりCCで行われたカナダカップ(現ワールドカップ)だという。
「この大会は世界各国から36チーム72人が参加。団体優勝の米国は、メジャー通算7勝のパーマーと同年のマスターズと全英に勝ったニクラスが組んで、国内試合では見たこともない大ギャラリーを引き連れていました。当時はパーシモンのドライバーですが、ニクラスの打球はいきなり高い弾道で飛んでいくのに対し、パーマーの打球は地を這うように数十ヤード進み、そこから急に浮き上がる。弾道だけで、これはパーマーが打ったものだと分かりました。
スイングが特別いいわけでもなく、パーマーフィニッシュといわれた左肘を上げる独特なフィニッシュは、日本のファンもよく真似ていました。超攻撃的なゴルフで、林に打ち込んでも50センチの隙間があればグリーンを攻める。パットは両膝をピタリとつけて下半身が微動だにしない。パーマーロックと呼ばれるスタイルで、20メートルのロングパットでもカップを狙う。常識外のプレーでファンを魅了した。あの時の一挙手一投足は、今でも脳裏に焼きついています。謹んでご冥福をお祈りします」