岡邦行
著者のコラム一覧
岡邦行ルポライター

1949年、福島県南相馬市生まれ。ルポライター。第3回報知ドキュメント大賞受賞。著書に「伊勢湾台風―水害前線の村」など。3・11後は出身地・南相馬中心に原発禍の実態を取材し続けている。近著に「南相馬少年野球団」「大島鎌吉の東京オリンピック」

猿渡武嗣さんは妻に笑われた占いの「39歳で死ぬ」が現実に

公開日: 更新日:

 振り返れば、猿渡の新日鉄での17年間のサラリーマン生活において、東京本社勤務時代までが心休まる充実した時代だった。

 猿渡の最後の職場となったのは、北海道の新日鉄室蘭。

 その厚生課長として赴任したのは、80年だった。もちろん、厚生課長に昇進しての最初の赴任地だったためだろう。大いにハッスルし、部下にお手本を示すがごとくモーレツサラリーマンに徹した。残業もいとわず、接待ゴルフに接待マージャン、得意先への夜の接待。帰宅はいつも午前さまだったという。

 東京時代と比べると、その仕事量は天と地ほどの違いで、家族と夕食をともにできるのは週に1、2回。休日を一緒に過ごせるのは月に1回。

■職場では「オリンピックのサル」と揶揄

 多忙な課長職とはいえ、これほどまでに仕事に追われたのはなぜなのか。元日本陸連関係者が、その理由をこう語る。

「現役時代の猿渡は、多くのオリンピアンを輩出していた“旧八幡製鉄系”の新日鉄八幡の社員。対して“旧富士製鉄系”の新日鉄室蘭には、オリンピック種目の陸上競技部はなく、同じ会社でも温度差があった」

 そのためだろうか。新日鉄室蘭に赴任した猿渡武嗣は、陰では「オリンピックのサル」と揶揄されていた。それは明らかに動物のモンキーを指していた。

 当然、払拭する行動を開始する――。(つづく)

▼さるわたり・たけつぐ 1942年福岡県生まれ。65年に中央大学から八幡製鉄所(現新日本製鉄)に入社。アジア大会で2度優勝した中距離陸上界の第一人者。64年東京、68年メキシコ五輪陸上3000メートル障害代表。

【連載】東京五輪への鎮魂歌 消えたオリンピアン

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    センバツ人気低迷の真犯人!「スタンドガラガラ」なのは低反発バット導入のせいじゃない

    センバツ人気低迷の真犯人!「スタンドガラガラ」なのは低反発バット導入のせいじゃない

  2. 2
    三田寛子ついに堪忍袋の緒が切れた中村芝翫“4度目不倫”に「故・中村勘三郎さん超え」の声も

    三田寛子ついに堪忍袋の緒が切れた中村芝翫“4度目不倫”に「故・中村勘三郎さん超え」の声も

  3. 3
    若林志穂が語った昭和芸能界の暗部…大物ミュージシャン以外からの性被害も続々告白の衝撃

    若林志穂が語った昭和芸能界の暗部…大物ミュージシャン以外からの性被害も続々告白の衝撃

  4. 4
    (6)「パンツを脱いできなさい」デビュー当時の志穂美悦子に指示したワケ

    (6)「パンツを脱いできなさい」デビュー当時の志穂美悦子に指示したワケ

  5. 5
    夏の甲子園「朝夕2部制」導入の裏で…関係者が「京セラドーム併用」を絶対に避けたい理由

    夏の甲子園「朝夕2部制」導入の裏で…関係者が「京セラドーム併用」を絶対に避けたい理由

  1. 6
    井上真央ようやくかなった松本潤への“結婚お断り”宣言 これまで否定できなかった苦しい胸中

    井上真央ようやくかなった松本潤への“結婚お断り”宣言 これまで否定できなかった苦しい胸中

  2. 7
    マイナ保険証“洗脳計画”GWに政府ゴリ押し 厚労相「利用率にかかわらず廃止」発言は大炎上

    マイナ保険証“洗脳計画”GWに政府ゴリ押し 厚労相「利用率にかかわらず廃止」発言は大炎上

  3. 8
    「大谷は食い物にされているのでは」…水原容疑者の暴走許したバレロ代理人は批判殺到で火だるまに

    「大谷は食い物にされているのでは」…水原容疑者の暴走許したバレロ代理人は批判殺到で火だるまに

  4. 9
    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

  5. 10
    大谷は口座を3年放置のだらしなさ…悲劇を招いた「野球さえ上手ければ尊敬される」風潮

    大谷は口座を3年放置のだらしなさ…悲劇を招いた「野球さえ上手ければ尊敬される」風潮