栗山巧が西武初の生え抜き2000安打に王手! “将来の監督候補”の正体を先輩、担当スカウトが明かす

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 大記録達成は時間の問題だ。

 2000安打達成まであと2本に迫る西武栗山巧(38)は、3日の楽天戦に「6番・左翼」でスタメン出場。九回に右前打を放ち、王手をかけた。

 過去には他球団から西武に移籍、あるいは他球団に移籍した選手が快挙を達成したことはあっても、西武一筋で2000本を打つのは、栗山が初めてとなる。

■好不調の大きな波がない

 ロッテ、西武で活躍し、1983年に2000安打を記録した山崎裕之氏は「栗山はひたすら野球に取り組んできた優等生です」とこう続ける。

「最大の特徴は好不調の大きな波がないこと。小さな波はあっても、スランプで長く苦しむことがない。レギュラーに定着した2008年からは、故障などがあった17、18年を除いてコンスタントに毎年100安打以上打っている。これは自分のバッティングを確立している証拠。さすがに年齢も年齢なので峠を越した感は否めないが、今季もうまくボールを呼び込んでしっかりと叩いている。性格もマジメで人の話を素直に聞くタイプです」

 山崎氏は数年前、打撃で悩む栗山に打撃フォームの助言をした。

「後日、人づてに聞いた話ですが、栗山は『2000本を打つ人って、シンプルな考え方なんだなあ』と周囲に漏らしたそうです。当時の栗山は打撃を難しく考え過ぎていたのかもしれない。栗山はこちらの話を『はい、はい』と聞き流さず、真摯に耳を傾けてくれる。自らをレベルアップすることに純粋で貪欲なのです。加えて言うならば、栗山は人と話す際、きちんと相手の目を見て話す。これまでに受けてきた教育のたまものでしょう」

ドラフト指名を他のスカウトが猛反対

 栗山は01年、育英高(兵庫)からドラフト4巡目で入団した。当時の担当スカウトが鈴木照雄氏(現飯田ボーイズ監督)だ。

 鈴木氏は関西担当として、松井稼頭央(現西武二軍監督)をはじめ、中島宏之(現巨人)や和田一浩(西武、中日)、栗山の同期である中村剛也炭谷銀仁朗(現楽天)ら数々の逸材を発掘した。その鈴木氏が栗山の性格について、こう言う。

「高校時代から大人びたところのある選手でした。律義でマジメ。これは炭谷などもそうですが、栗山も入団直後から毎年、今も私にお中元とお歳暮を送ってくれる。ご両親にしっかりと教育されたのだと思います。律義さといえば、用具メーカーとの契約もそうです。栗山はプロ入り後に最初に契約したミズノのバット、グラブ、手袋を使い続けている。途中でメーカーを変える選手も珍しくない。その点も栗山は決してブレません」

 鈴木氏は、栗山が中学時代に所属していた硬式野球チーム、神戸ドラゴンズ時代から目をかけていたという。

「当時から練習熱心。育英高校に進学した後も毎日の練習を欠かさず、そんな姿を見てドラフトで推薦した。ただ、当時は全国的には名前が売れているわけではなかったから、他のスカウト陣に反対されましたよ。当時の西武はドラフト会議前日の会議まで、各スカウトが自分の推薦候補を隠していた。スカウト同士ですら、誰が誰を指名候補と考えているのか、ドラフト直前までわからない。それもあって、私が栗山の名前を出すと、他のスカウトは猛反発しました。ただ、かつて西武の球団管理部長だった根本陸夫さんは、そんな時は必ず、『おまえが担当なんだから、どうするかはおまえが決めろ』とスカウトの背中を押した。だから私も、意見を押し切ることができたのです」

記者を見つけるや記事に真顔で反論

 そんな選手が今や西武の中核選手となり、生え抜き初の2000安打も達成する。鈴木氏が続ける。

「昔からこうと決めたらテコでも動かない頑固さがあり、一心不乱に練習にも取り組んでいましたからね。入団直後、本人には『西武で監督になれるくらいやってみろ』『(広島で2000安打を達成した)前田智徳を目指せ!』と、ハッパをかけました。プロ入りしてからは、『ベテランになったら走れ』と伝えたこともある。年齢を重ねると、技術の向上は難しくなってくるが、それまでの積み重ねがある。となれば、どれだけ体力を維持できるかですから」

 これまでスキャンダルとも無縁で、親会社や球団内では「将来の監督候補」として高い評価を受けているという。栗山と共にプレーした経験のある後輩OBは「30歳になったころから一層、野球に対する意識が高くなったように感じます」と、こう続ける。

「昔は闘争心あふれる性格で、ガツガツしていましたが、今はだいぶ丸くなった印象です。周囲から将来のリーダーとして見られる立場になったことも無関係ではないでしょう。物事の先を読み、理論立てて考えたり、チームのために率先して動くようになった。『みんなオレについてこい』ではなく背中で語るタイプですが、人を引き付けるものがある。誰かと話す時もいったん自分の頭で考えてから話す。取材でも問われたことに即答しない。特にチームに関わる質問には慎重です。そっけない返答が多いのは、自分の発言がチームにどんな影響を与えるかをわかっているから。言うなれば寡黙な戦略家タイプ。他球団から移籍してきた選手にも一目置かれています」

 そんな栗山らしいエピソードがある。14年6月のことだ。最下位低迷の責任を取って伊原監督が途中休養、田辺監督代行が就任した。その際、ナインが田辺代行に真っ先に尋ねたのが「(伊原監督時の)ヒゲや茶髪、ダブダブのユニホーム禁止令はどうなるのか」ということだった。日刊ゲンダイは、監督が途中休養を余儀なくされる中、野球とは全く無関係のヒゲや茶髪を気にしていることを受けて、「西武、先が思いやられるナインの幼稚さ」と報じた。記事が出た直後、栗山は神宮球場でのヤクルト戦を終えてぶら下がり取材をする日刊ゲンダイの記者を見つけるや、「ゲンダイさんに言いたいことがあるんです」と、真顔でこう反論したのだ。

「記事を読んだんですけど、幼稚ですか? 僕ら。(ヒゲや茶髪は)僕らからすれば無関係じゃありません。僕らにとっては労働条件にも関係するんです。たとえばね、(サラリーマンで言うなら)これまでクールビズでノーネクタイの出社がOKだったとしましょう。その決まりをつくった人が(異動などで)代わったとします。となると、明日からはノーネクタイで出社してもいいんだろうかと普通、そう思いますよね? それと同じですよ。別にヒゲを伸ばしたり、茶髪にしたいわけじゃない。確認のために(田辺代行に)聞いたんです」

 栗山は当時30歳。チームリーダーの自覚もあり、あえて反論したのだろう。

 気になる監督就任時期はまだまだ先、ともっぱら。西武は引退してすぐに監督を務めたものの、最終的にチームがボロボロになった伊東勤監督時代の反省もあり、二軍指導者などの下積み期間を経た上での監督就任が慣例となっているからだ。前出の鈴木元スカウトが「監督になれるくらい頑張れ」とハッパをかけたその思いは早晩、実現するはずである。

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