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元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

<6>オマーン戦勝利を見届け帰国して痛感…日本の「水際対策」のハードルの高さ

公開日: 更新日:

 2021年11月16日(日本時間17日未明)のカタールW杯最終予選・オマーン戦(マスカット)で日本代表の1-0の勝利を見届け、18日未明(同昼)のフライトで帰国の途に就いてから丸1日。羽田空港で筆者を待っていたのは、非常に厳格な水際対策だった。事前に情報をチェックし、誓約書や質問状の回答は済ませていたが、機内で渡された検疫提出用の書類などにも記入し、複数のカウンターで提出する作業には目が回りそうだった……。(写真はすべて元川悦子)

 ◇  ◇  ◇

 オマーンからは、まずドイツ・フランクフルトへ移動。18日朝(同夜)に到着し、5時間近いトランジットを使って、久しぶりにレストランでドイツの味を楽しんだ。

 空港内の飲食店は、ワクチン2回接種証明かPCR陰性証明書を提示が必須。だが、ドイツ在住記者仲間によれば、全国で義務化されているわけではない様子。高速鉄道「ICE」乗車も書類提示義務はなく、通常通りだという。

「ドイツ人の大半はワクチンさえ打ってれば大丈夫という考え方なんです」と同記者も話していた。

 確かにレストランの人々を見ても、多少は距離を取っていたが、マスク会食をしている人は皆無。人数数制限もなく、コロナ前とほとんど変わらない風景に映った。

 注文したのはニュルンベルガー・ソーセージの朝食セットとバイツェンビア。ドイツには香川真司(PAOK)がボルシア・ドルトムントで活躍していた頃から年2回ペースで訪れており、ソーセージ&ビールは定番メニューだった。

 が、2019年10月にフランクフルトで長谷部誠鎌田大地の取材をしたのを最後に一度も現地を訪れる機会がなく、ドイツ料理も食べていなかった。2年ぶりの味はやはり格別だった。

日本への帰国便はガラガラ

 その後、帰国便のルフトハンザ便に乗り換えた。運行会社はANA。親切なCAに「お客さんは増えましたか?」と尋ねると「全然ですね」と苦笑する。実際、同便もフライトもガラガラで、筆者含めて3席占領して寝ている人が多かった。

 これでは、航空会社の経営が立ち行くはずがない。ANAホールディングスは先月末、2022年3月期の連結最終損益が1000億円の赤字見込みだと発表したばかり。

 25年末にANAブランドの人員を20年度比9000人削減する計画も明らかにしている。航空会社が再び活況を呈するためにも、コロナとの共存を真剣に考えていく必要があると痛感した。そこに立ちはだかるのが日本の水際対策だ。

 オマーンへ赴いた時はワクチン・PCR陰性証明書を指定されたサイトにアップロードするだけで、空港で特別な書類提出もいらなかったが、日本は全く違う。

 事前にMySOSやCOCOAのアプリをスマホにダウンロードし、フランクフルトを発つ前に質問状に回答してQRコードを保存し、さらに誓約書にも記入を済ませていたのだが、さらに機内で検疫提出用書類などを渡された。

「こんなにたくさん書いて出すの?」と疑問を覚えつつ、19日午前7時に羽田に到着。しばらく機内で待機させられた後、外に出るとこれでもか、というくらい書類確認があった。

MySOSの使い方が分からない

 まず最初にPCR陰性証明書を提示。それはオマーンで取得済みだったから問題なかった。続いてワクチン接種証明を見せて進み、空港でのPCR検査用キットを受け取る。近くの小さなブースで一定量の唾液を採取し、容器を担当者に手渡した。

 次の関門はアプリ登録。前述の通り、MySOSはすでにインストールしていたが、使い方がよく分からない。それでも設定担当者と使い方説明担当者がおり、それぞれが手早く対応してくれた。

 その先にあるのが質問状回答後のQRコード確認と誓約書提出のカウンター。ここまで辿り着くのに1時間はゆうに経過していた。「今の時間帯は空いているので良かったですね」とスタッフに笑顔で言われたのにはさすがに面食らった。

 正午~午後2時頃の時間帯は到着便が重なるため、倍以上かかることもあるようだ。

 この後は、検査結果待ち。今回は20分程度で陰性と分かり、入国審査へ進んで外に出られた。

 10月のサウジアラビア遠征に赴いた記者からは「帰国時は空港を出るまでに3時間はかかりますと」と聞いていたが、今回は1時間半で済んだ。

 自家用車を空港駐車場に停めていたのでハイヤーなどの手配をする必要もなく、自力で帰宅もできた。そういう意味ではまだ幸運だったのかもしれない。

日本だけが「鎖国状態」

 ただ、これから最低10日間は自主隔離。毎日ビデオ通話と現在地・健康確認も義務付けられる。ご存じの通り、11月8日から「条件付きで隔離が3日間に短縮された」ものの、行動計画書など膨大な書類を作成して関係省庁に届け出し、審査に2~3週間かかるというから非常にハードルが高い。

 文科省に電話をしたら「フリーランスの方は原稿依頼先に受け入れを頼んでください」と言われたが、それも容易ではなく、断念せざるを得なかった。ここまで厳格な水際対策がある限り、日本人の国際往来が増える可能性は、薄いと言わざるを得ない。

 世界中が緩和の方向に進み、欧州やオマーンはすでにアフターコロナに突入している。なのに日本だけが「鎖国状態」で本当にいいのだろうか……。

 航空会社の経営のみならず、経済的なダメージは計り知れない。この点は国民全体が今一度、考えるべきテーマではないか。世界と日本のコロナ水際対策の差を把握できたという意味で、今回はサッカー取材以上の収穫があった。

【連載】日本vsオマーン コロナ禍のアウェー戦取材戦記

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