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元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

田中碧がカタールW杯で再認識「国を背負いながら本来の力を出すレベルには至っていない」

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田中碧(デュッセルドルフ・MF/24歳)

「ここ(W杯上位)にはもう化け物(みたいな選手)しかいない。今度は自分が化け物になって戻ってきます。そして優勝したいなと思います」とカタールW杯決勝トーナメント一回戦のクロアチア戦に敗れた後、涙ながらに誓った。

 グループリーグのスペイン戦で値千金の決勝弾を叩き出した男は今、ドイツ2部というタフな環境で壁を乗り越えようと必死に戦っている。

「やっぱり目に見える結果を残すことが大事。ゴールとアシストのところですね」と彼は目下、公式戦1得点.3アシストという数字を引き上げることに集中している。

  ◇   ◇   ◇

 2021年10月のW杯最終予選の大一番・豪州戦で先制点を挙げ、スペイン戦でも「三笘(薫=ブライトン)の1㍉」を勝利に結び付けた。

 日本を16強へ導いたゴールの後には「僕は持ってる男だと思います」と自ら屈託なく言うほど、初めての世界舞台では輝きを放った。

 しかしながら、クロアチア戦で先発を外れ、延長戦から出場。PK戦敗退の瞬間をピッチ上で見つめるという悔しさも味わった。

 だからこそ、27歳という円熟期で迎える2026年北中米W杯時では、中盤の軸を担うべき存在だという期待は高まる一方だ。

 そんな田中が今、プレーするのはドイツ2部。遠藤航(シュツットガルト)がドイツ1部でキャプテンマークを巻き、守田英正(スポルティング・リスボン)が欧州CLに参戦していることを考えると、立ち位置が見劣りするのも確か。彼もいち早くステップアップしたいところだ。

 今季のデュッセルドルフの順位は5位。1部昇格のチャンスがまだ残されているだけに、ラストスパートをかけることが重要になってくる。

「昨季、滉(板倉=ボルシアMG)君が2部だったシャルケで1年間やって、昇格の原動力になったことで今季は1部上位のクラブに行けた。やっぱり昇格争いでそれなりのパフォーマンスを見せていれば可能性はいくらでもあるのかなと思います。
そのためには、自分も違いを見せないといけない。数字が残れば、もっと自信も持てる。今のところはカップ戦を入れて1ゴール・3アシストなので合計で2ケタのスコアポイントに達したいですね。正直、チャンスを全部決めていれば、あと5~6点は上乗せできている。残り試合で1試合で1ポイントずつ稼いでいけば、十分に行けるだろうと思っています」と2月に現地取材した時点で田中は目を輝かせていた。

 ところが、3月に入ってまさかのスタメン落ちという事態に直面した。

 田中が出番なしに終わった4日のレーゲンスブルク戦後、ティウーネ監督は地元紙に「他の選手がいいプレーをしたからだ。当然、とても感情的だった。W杯出場者なのにプレーしなかったのだから」とコメントしたという。

 終盤戦で日本代表ボランチがどんな扱いをされるのか、分からない部分もあるが、少なくとも本人は「自分のプレーは悪くない。これをブレずに継続していくことが大事」と自信を失っていない。やるべきことをコツコツと積み重ね、巻き返しを図る覚悟のようだ。

 考えてみれば、森保日本が最初に発足した2018年秋、田中は川崎で試合に出ていなかった。

 2019年から頭角を現し、川崎がJ1と天皇杯の2冠を達成した2020年にブレイク。2021年夏に東京五輪代表と海外移籍の両方を射止め、A代表に定着するという怒涛の成長曲線を辿ったのだ。

 今は多少苦しくても、ここからの3年間でもう一段階、二段階と飛躍していけば「2026年W杯で化け物になる」という目標に手が届くはず。ここからギアを上げていけばいいのだ。

「次のW杯まで3年あるので、そんなに焦ってはいません。一歩ずつやるべきことをやるしかない。自分のステージを挙げるチャンスは基本的に1年に1回しかないので、1年間やったあとに次の道が見えてくる。そこは自分には操作できないので、(今季終了後の)夏に考えればいいことだと思います。最終的には、欧州5大リーグ(の上位チーム)からCLに出るという一番の目標を達成したいです。守田君もCL出てますけど、日常のリーグ戦とCLの両方で高いレべルでやれればいい。そうなるように今季残りを頑張っていきます」

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