突然のがん宣告にも動揺なし「で、ステージはナンボでしょうか?」
もちろんステージ1と言われ、ホッとしたのは事実ではあるが――。
■妻も「へぇ~、そうなんや」
自分で車を運転して入院したので退院時も自らハンドルを握り、ひとりで自宅まで戻った。
妻の修子に「お父さん(とプライベートでは呼ばれている)、どないやった?」と聞かれた。
「何や、先生は喉頭がんや、言うてはるで」
「へぇ~、そうなんや」 お母さん(妻をこう呼んでいる)は、いたって冷静そのものだった。
決して怖がりのタイプではないが、これまで私が病院にかかって検査結果を聞く段になると「一緒に聞くのも何だか怖いから……お父さんがひとりで聞いてきて」と尻込みすることがあった。
この時は自宅に戻ってがん宣告を伝えても、お母さんは動じなかった。 そもそも声がかすれるだけで痛いもかゆいもなかったし、手術前も手術後も、体の内部が変調をきたしているような違和感はなかった。私自身に悲愴感がなく、そのあたりをお母さんも敏感に感じ取り、平常心を保てたのではないだろうか。