突然のがん宣告にも動揺なし「で、ステージはナンボでしょうか?」
この年の9月、大阪の帝国ホテルで「旭日中綬章受章記念祝賀会」を開催した。
この祝賀会前に「口腔白板症」と診断され、終わってから手術を受けてがん宣告を受けたことになるが、いずれにしても祝賀会の時に決意した思いは、いささかも揺らぐことはなかった。
「サッカーにすべてを捧げた人生が報われた。同時に支えてくれた人たちへの感謝の念が沸き起こった。これから先も日本のスポーツ、サッカーの発展のために何をすればいいのか、常に念頭に置きながら恩返ししていきたい。そのために骨身を削り、残りの人生を精いっぱい生きていきたい」
22年になって体重減による筋力低下に悩まされ、周囲の人にご心配をおかけした。今は釜本ファミリーの温かくも厳しい叱咤激励を受けながら、筋トレに精を出している。夏が終わる頃には、はつらつとした「釜本邦茂」を見ていただきたいと思っている。
がんの放射線治療に話を戻すと、こんなことがあった。途中で主治医に「死ぬで」と真顔で言われたのだ。(つづく)
(取材・構成=絹見誠司/日刊ゲンダイ)