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小林至桜美林大学教授

1968年、神奈川県出身。91年ドラフト8位で東大からロッテに入団。93年に引退し、94年から7年間米国在住。コロンビア大でMBAを取得し、江戸川大教授を務めながら、2005~14年にソフトバンクホークスの取締役を兼任。現在は、一般社団法人大学スポーツ協会理事、一般社団法人スポーツマネジメント通訳協会会長。YouTubeチャンネル「小林至のマネーボール」も好評配信中。

国内FA市場を停滞させる「密室の紳士協定」…一方メジャーは透明ガバナンスだから発展した

公開日: 更新日:

 欄外に「付帯事項あり」と書くだけで、内容を知るのは当事者だけ。NPBも参稼報酬(年俸)しか把握しておらず、リーグ全体で契約内容を共有する仕組みもない。

 この“密室性”こそが、FA制度の最大の問題点です。

 実際、FAで移籍した選手が翌年トレード対象となりかけた際、相手球団が詳細を確認すると「契約年数が長く、年俸も想定より高かった」と判明して破談--そんなことが現実に起こります。秘密主義が市場を混乱させ、球団間の信頼関係すら揺るがせるのです。

 一方、メジャーでは契約情報がリーグ全体で共有され、MLB機構・選手会・公認代理人ら数千人がデータベースにアクセスできます。大谷翔平の7億ドル契約が即座に報じられたのも、制度上“隠せない”からです。契約は個人情報ではなく、ビジネスの基盤となる「公共情報」として扱われ、透明性が市場の健全性を支えています。

 情報の非対称性は市場の効率を大きく損ないます。買い手(球団)と売り手(選手)が同じ情報を共有してこそ、公正な価格、すなわち「本当の市場価値」が生まれるのです。MLBでは1976年のFA導入を機に平均年俸が4.5万ドルから160万ドルへ――約35倍に上昇しました。

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