目からウロコの浮世絵の楽しみ方

公開日: 更新日:

(世界文化社 2400円)

「EDO―100 フカヨミ!広重『名所江戸百景』」堀口茉純著

「大はしあたけの夕立」は、夕立の中、隅田川にかかる大橋を足早に渡る人々を描いている。この絵には当初、川岸に立ち並ぶ蔵の光る白壁と、2艘の小舟が描かれていたのだが、次の版では削られた。実はこの光る白壁は幕府の御用船格納庫である御船蔵だった。このあたりは安政の大風害で大きな被害を受けた地域で、御船蔵を描き入れると復興の遅れに対する風刺と思われる。そこであわててこれらを消したというわけだ。広重作品の裏事情を読み解いてくれる一冊。
(小学館 1500円)

「遊べる浮世絵」藤澤紫著

 幕府の締め付けが厳しい中、浮世絵は報道の手段としても用いられた。歌川国芳の「源頼光公館土蜘作妖怪図」は、将棋に興じる頼光の背後に土蜘などの妖怪がひしめいている。頼光は実は将軍家慶で、妖怪は苦しむ庶民を暗示しているといわれ、天保の改革を風刺していると評判になった。また、鞘絵という遊び心のある浮世絵もある。円形に歪んだ絵の中心に刀の鞘のようなものを置くと、ちゃんとした絵が鞘に映る。この一冊で江戸の文化が見えてくる。(東京書籍 1900円)

【連載】ザッツエンターテインメント

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  3. 3

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  4. 4

    阪神・大山を“逆シリーズ男”にしたソフトバンクの秘策…開幕前から丸裸、ようやく初安打・初打点

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    創価学会OB長井秀和氏が明かす芸能人チーム「芸術部」の正体…政界、芸能界で蠢く売れっ子たち

  2. 7

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  3. 8

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  4. 9

    大死闘のワールドシリーズにかすむ日本シリーズ「見る気しない」の声続出…日米頂上決戦めぐる彼我の差

  5. 10

    ソフトB柳田悠岐が明かす阪神・佐藤輝明の“最大の武器”…「自分より全然上ですよ」