あの戦争「外務省善玉説」は本当か

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 日ソ戦争について、〈日本政府がソ連の開戦宣言文書を正式に受理したのは、ソ連軍が満ソ国境全面で総攻撃を開始した後の(一九四五年)八月十日、午前十一時十五分から十二時四十分まで行われた、東郷外相・マリク駐日ソ連大使会談においてであった。〉という史実が重要だ。あの戦争において、ソ連との関係では、日本が侵略された側なのである。

 第1次世界大戦後、日本は世界の一等国になったと舞い上がってしまった。その結果、〈軍事大国としての外交を優先し、工業大国への道を軽視してしまった〉ことに佐藤氏は、日本が破滅の道を選んでしまった原因があると考える。評者もこの指摘は正しいと考える。現在の外務省の「安保マフィア」は、集団的自衛権をできるだけ幅広く行使する枠組みを作ろうと腐心している。この連中に外交を委ねておくと、再び日本を破滅に導く危険がある。太平洋戦争における外務官僚が果たした役割を批判的に検討し、あの連中が同じ穴に落ちることを防がなくてはならない。

★★★(選者・佐藤優)
(2015年8月6日脱稿)

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