「情人」花房観音著

公開日: 更新日:

 1995年1月17日。神戸の公立高校に通う高校3年生の笑子は、尋常ではない地鳴りの音で目を覚ました。大きな揺れに襲われ、まだ暗い早朝、声を出し合って父や兄と無事を確認し合う。ところが京都に里帰りしていたはずの母親が、けがをした姿で男に背負われて現れる。その男は、叔父の再婚相手の連れ子の絵島兵吾。再婚後すぐに母をなくし、叔父も再々婚して居場所を失ったため、笑子の家では同情していたのだが、その兵吾が母の不倫相手だったのだ。

 ショックを受けた笑子は、大学進学を理由に京都でひとり暮らしを始める。年下の親戚の男に執着する母親と、そんな母親を、なにもなかったように受け入れる父親への疑問から、笑子は性の世界を探究し始めるのだが……。

 どこか冷めた性体験しかない若い女性が、母親の不倫をきっかけに性に目覚めていくエロチック小説。体と心は別々なのか。愛とは、結婚とは、セックスとは何なのか。しなやかで、感性で描いている。(幻冬舎 1600円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    高市政権マッ青! 連立の“急所”維新「藤田ショック」は幕引き不能…橋下徹氏の“連続口撃”が追い打ち

  4. 4

    YouTuber「はらぺこツインズ」は"即入院"に"激変"のギャル曽根…大食いタレントの健康被害と需要

  5. 5

    クマと遭遇しない安全な紅葉スポットはどこにある? 人気の観光イベントも続々中止

  1. 6

    和田アキ子が明かした「57年間給料制」の内訳と若手タレントたちが仰天した“特別待遇”列伝

  2. 7

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  3. 8

    阪神・才木浩人が今オフメジャー行きに球団「NO」で…佐藤輝明の来オフ米挑戦に大きな暗雲

  4. 9

    「渡鬼」降板、病魔と闘った山岡久乃

  5. 10

    元大食い女王・赤阪尊子さん 還暦を越えて“食欲”に変化が