政党混乱、扇動政治家が暗躍 「分断される社会」を生きる

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「自分とは違った人たちとどう向き合うか」ジグムント・バウマン著、伊藤茂訳

 祖国ポーランドを追われながらも「液状化社会」という概念で国際的に知られた社会学者。本書は今年初めに亡くなった彼が、現代の移民・難民問題に迫った最新論集だ。

 中東の争乱を逃れながらも脱出先にたどりつく前に力尽き、海辺に遺体となって打ち上げられる難民。その映像が束の間国際的な論議を呼び、人道的援助の声を高めながらも、いつのまにか沈静化し、誰も思い出さなくなってしまう。

 この「無関心化のメカニズム」は現代のメディア社会の痛点だ。難民の受け入れ側の社会も、格差の下に沈んだ人々が難民を自分より下に見ることで自尊心を回復しながら、なお彼らに脅威を感じ、その不安を利用して扇動政治家が策謀したりする。

 現代社会の脆弱(ぜいじゃく)な側面を的確に言い当てる碩学(せきがく)の知見。(青土社 1800円+税)

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