「パノララ」柴崎友香著
28歳の真紀子は、知人のイチローの実家に居候することに。何かの拍子に、部屋の更新料の工面に苦しんでいることを話したら、とんとん拍子で話が進んだのだ。自営業のイチローの実家は、父親の将春によって増改築が繰り返され、真紀子が住むことになったのは車庫の上の赤い小屋だった。引っ越し後、真紀子はイチローの母みすずが女優で、姉の文と妹の絵波はそれぞれ父親が違うことを知る。
ある夜、一家と夕食をともにした真紀子が部屋をパノラマ撮影すると、なぜかイチローだけ写っていない。後日、真紀子は彼から「1日が繰り返される」ことがあると打ち明けられる。
自身もまた日常の歪みにはまる真紀子を主人公に、小説の可能性に挑んだ長編意欲作。(講談社 980円+税)