「女になる方法」キョトリン・モラン著、北村紗衣訳

公開日: 更新日:

 イギリス中部にある中規模都市ウルヴァーハンプトンのワーキングクラスの家で育った女の子。家は貧しく、6人きょうだい(その後8人に)の長女、体重は80キロを超え、男の子たちは彼女を見ると石を投げる。そんな彼女が13歳の誕生日に、18歳になるまでに①体重を減らす、②いい服を着る、③友達をつくる、④犬をちゃんとしつける、⑤ピアスの穴をあけることを目標に掲げ、女であることを自覚する。

 本書は音楽ライター、コラムニストとして活躍する著者が、自らの「女になる」道のりを描いた半自叙伝だ。

「ひとは女に生まれるのではない。女になるのだ」と言ったとき、ボーボワールは事態を半分も把握していなかった、と言いたくなるほど、「女になる」ためには問題が山積。13歳の誕生日から間もなくやってきた毎月の出血に始まり、ムダ毛の処理、下着の選び方、ダイエット……。

 そんなこんなで右往左往しているときに出会ったのが、オーストラリアのフェミニスト、ジャーメイン・グリアだ。15歳の少女は、自分もグリアに倣って「わたしはフェミニスト」と公言する。これによって、長年わからなかったパズルの答えが見つかり、生きる武器を得たのである。

 とまあ、こんなふうに説明してしまうと、お堅いフェミニストの宣言書のように思えるが、実際は罵詈雑言、卑語猥語、俗語が飛び交う痛快な読み物。自らを道化に仕立て、硬直しきった男どもを痛烈に批判し、返す刀で男の描くステレオタイプに同化する女たちの阿呆らしさを切って捨てる。16歳で音楽誌「メロディー・メーカー」に勤め、以後イギリスのカウンターカルチャーの中心にいる著者だけに、ロックからテレビドラマに至る情報もたっぷり。

 本の中から新時代のフェミニズムの声が聞こえてくる。 <狸>

(青土社 1900円+税)

【連載】本の森

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志氏はパチプロ時代の正義感どこへ…兵庫県知事選を巡る公選法違反疑惑で“キワモノ”扱い

  2. 2

    タラレバ吉高の髪型人気で…“永野ヘア女子”急増の珍現象

  3. 3

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  4. 4

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  5. 5

    《#兵庫県恥ずかしい》斎藤元彦知事を巡り地方議員らが出しゃばり…本人不在の"暴走"に県民うんざり

  1. 6

    シーズン中“2度目の現役ドラフト”実施に現実味…トライアウトは形骸化し今年限りで廃止案

  2. 7

    兵庫県・斎藤元彦知事を待つ12.25百条委…「パー券押し売り」疑惑と「情報漏洩」問題でいよいよ窮地に

  3. 8

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 9

    大量にスタッフ辞め…長渕剛「10万人富士山ライブ」の後始末

  5. 10

    立花孝志氏の立件あるか?兵庫県知事選での斎藤元彦氏応援は「公選法違反の恐れアリ」と総務相答弁