「ヌメロ・ゼロ」ウンベルト・エーコ著、中山エツコ訳

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 1992年6月6日、ミラノに住むコロンナが目覚めると、自宅の水が出なくなっていた。何者かが、部屋に忍び込み止水栓を閉めたようだ。彼らの狙いは、コロンナが編集部で見聞きしたことを記録したフロッピーディスクのようだ。

 2カ月前、コロンナはシメイから本の執筆を依頼された。本は、彼が編集長を務めることになった日刊紙の創刊準備を記録するというものだった。シメイは、新聞はパイロット版「ヌメロ・ゼロ(0号)」を発行するだけで、創刊されることはないだろうという。出資者のヴィメルカーテの意図を教えられたコロンナは、執筆を引き受け、翌日から新聞の編集室に通っていたのだ。

「薔薇の名前」の著者が、メディアを舞台に情報社会を警告した遺作。

(河出書房新社 880円+税)

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