「前立腺歌日記」四元康祐著
詩人である著者は20年以上ミュンヘンに住んでいるが、医師からがんであることを告げられた。幸い初期なので手術など3つの選択肢があるという。今なら体力もあるから手術後の回復も早く、後遺症も少ないと言われ、「後遺症って何なんですか」と聞くと、「主に尿漏れと性的不能です」。
生きるか死ぬかの話をしているときに、あまりに次元が違うと思って笑ってしまった。あはははは。そこで一首。
「漏れと萎えマフラーのごとく靡かせて三つ子の魂冥土の飛脚」
手術は成功した。医師はいの一番に、神経は切らずに残しておいたと告げた。
手術後、日常生活に復帰するまでの自分をユーモラスな歌や詩を通して描く私小説。
(講談社 1850円+税)