「文豪の猫」アリソン・ナスタシ著 浦谷計子訳

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 かのエドガー・アラン・ポーは、「猫のようにミステリアスな作品を書けたらいいのだが」と語っていたという。彼の愛猫のカタリーナは、いつも執筆中の主人の肩の上に長々と身を横たえていたそうだ。

 作家と猫は相性がいい。作家が猫に孤独を癒やされたり、想像力をかきたてられたりする一方で、一日中、本に埋もれ机にかじりついている物書きのような人間たちは、猫にとっても理想的な伴侶なのだ。

 そんな猫に魅了された文人たちと、彼らの愛した猫のエピソードを集めたビジュアルブック。

「ゲド戦記」シリーズなどで知られるアメリカ人作家アーシュラ・K・ル・グウィンは、作家と猫の相性がいい理由をたずねられ、「だって物書きなら、手を止めて、犬の散歩に行きたいなんて思わないでしょう」と皮肉交じりに答えている。

 ル・グウィンと一緒に写真に写るトラ猫の「ボンゾ」は、作家が「肝っ玉母さん」と呼ぶ牧場にすむ野良猫が産んだ子供の一匹で、これまでの人生で出合った中で最高の猫だという。彼女は、別の飼い猫「パード」の伝記まで書いたことがあるそうだ。

 ホラー小説の帝王スティーヴン・キングの「ペット・セマタリー」という作品は、愛猫のスマッキーが車にひかれて亡くなったときの出来事がもとになっている。スマッキーの死後、作家は愛猫が眠る自宅近くのペット用墓地を訪ね、その場で時折、執筆するようになったという。

 ハードボイルド作家レイモンド・チャンドラーの愛猫の名はペルシャ猫の「タキ」。もともとは日本語の「タケ(竹)」という名前だったらしいのだが、いつのまにかタキと呼ぶようになってしまったらしい。作家になって以来、ずっとそばにいるので氏は編集者らにタキを「秘書」と紹介していたという。

 猫好きとして知られ、一時は22匹もの猫と同居していたレイ・ブラッドベリは、「アイデアは猫のように扱いなさい。こっちのあとを追いかけたくなるように仕向けるのだ」と猫をたとえに創作の秘訣を語っている。

 ブラッドベリの上をいく猫好きの作家が日本にもいる。大佛次郎だ。その猫愛は「猫好き」という言葉では言い尽くせぬほど深いもので、生涯に面倒を見た猫はおよそ500匹を数え、2軒あった自宅のひとつは猫専用だったほどだ。

 猫たちが行儀よく一列になって食事をする姿をうれしそうに眺めている作家の写真からも、猫に対する愛情がひしひしと伝わってくる。

 その他、マーク・トウェーンや言わずと知れたアーネスト・ヘミングウェー、トルーマン・カポーティ(表紙)、村上春樹など45人の愛猫作家、いや、猫バカ作家と呼ぶべき人々が登場。

 折々に、彼らが書いた猫が登場する作品も紹介され、猫好きにはたまらないブックガイドにもなっている。

(エクスナレッジ 1600円+税)

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