宇宙飛行士訓練でもっともつらいのはトイレの悪臭!?

公開日: 更新日:

 ティム・ピーク著「宇宙飛行士に聞いてみた!」(柳川孝二訳 日本文芸社 1800円+税)は、SNSを通じて寄せられた宇宙の疑問に答えるQ&A本。著者はイギリス陸軍航空隊所属の軍人から宇宙飛行士になった人物で、国際宇宙ステーション(ISS)で186日間の長期ミッションを遂行した経験を持つ。

 例えば「訓練で最悪だったことは?」という疑問。通称“ゲロ飛行機”と呼ばれる乗り物で行われる無重力訓練は、参加者の3分の2が気分が悪くなるという過酷なもの。この訓練が最悪かと思いきや、著者は極限環境ミッション運用という訓練がもっともつらかったという。

 フロリダ沖の海底約20メートルに沈められた研究施設で行われる訓練で、閉鎖環境でチーム行動能力を向上させることを目指す。6人のクルーで12日間過ごすのだが、汚物を排出するシステムがなく、トイレの悪臭に苦しめられたのが最悪の経験だったとか。臭いがひどくならないよう、クルーたちは施設から出て“魚のように”海の中で用を足したこともあるというから面白い。

 宇宙では船外に出てさまざまな活動を行うが、著者がもっとも驚いた瞬間があるという。ISSの太陽電池パドル部分で1時間ほど作業し、船内に戻ろうと足場を伝っていたところ、眼下400キロにオーストラリア大陸が見えた。その瞬間に突然めまいを起こし、動けなくなってしまったという。大きな構造体の近くで作業をしていると忘れてしまうが、自分が宇宙空間にいることを思い出した瞬間に、おかしくなってしまったと振り返る。

 宇宙での体重の量り方や地球帰還後のスケジュールなど、宇宙飛行士しか知り得ない情報が満載。子供だけでなく大人も楽しめる宇宙本だ。

【連載】ニュースこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 4

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑

  3. 8

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  4. 9

    米国が「サナエノミクス」にNO! 日銀に「利上げするな」と圧力かける高市政権に強力牽制

  5. 10

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性