「菜の花食堂のささやかな事件簿」碧野圭著

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 料理教室へ通う動機としては、料理の基礎を学ぶため、レパートリーを増やすため、カリスマ講師がいるため、社交の場として、等々が挙げられる。

 東京・武蔵野の一角にある「菜の花食堂」の料理教室はそのいずれの要素も満たしている。店は地元の野菜をふんだんに使ったランチが売りの人気レストランで、5年前から定休日を使って料理教室を開いている。オーナーで講師の下河辺靖子の家庭的な料理に憧れて生徒が集まってくる。

【あらすじ】派遣社員の優希は、靖子先生の温情で、助手として手伝いをする代わりに月謝を免除してもらっている。いつも欠かさず教室に通っていた香奈が連絡もなしに2度続けて休んだのを心配していると、教室を閉めようとする頃に憔悴しきった香奈が姿を見せた。聞くと、教室で習った料理を彼氏に食べさせたところ、急に別れを言い出されたというのだ。味が悪かったのか。

 試しに同じものを作ってみるが、何の問題もない。むしろ完璧だ。では、なぜ。優希らが首をかしげていると、靖子先生が見事その謎を解いてみせる。

 その後も、亡き妻のなすの揚げ浸しをもう一度食べたいという生徒の要望を受けてその味を再現したり、おいしいはずのケーキが捨てられた理由を推理したりと、抜群の推理力を発揮する靖子先生。そこへフランスにいる娘から真っ赤な帽子とチョコレートが送られてきた。手紙も何もない。さすがの靖子先生も我が事となると力が鈍るのか、見当がつかない。

 そこで優希は恩返しとばかりに、この謎に挑戦するのだが……。

【読みどころ】江戸東京野菜コンシェルジュの資格を持つ著者だけに登場する野菜レシピはどれも本格的。読後、挑戦してみてはいかが。

<石>

(大和書房650円+税)

【連載】文庫で読む 食べ物をめぐる物語

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