「紫外線のすごい力」南雲吉則著

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“紫外線を浴びると皮膚がんになる”と、多くの人が思っているだろう。しかし、紫外線にはさまざまな健康効果が期待できることが分かってきたと本書は解説している。鍵を握るのが、紫外線により体内で作られるビタミンDだ。

 近年、複数の医学雑誌に血中のビタミンDが不足している人はがん死亡率が1.7倍になるという論文が発表されている。ビタミンDには、遺伝子を活性化し体の組織の成長を促したり、免疫機能をコントロールしたりするなどの働きがある。例えば、免疫細胞に働きかけることで免疫力を高める一方、過剰な活性は抑制する役割も果たすことで、アトピーなどのアレルギー疾患やリウマチのような自己免疫疾患の改善、予防にもつながるという。

 また、膵臓(すいぞう)の遺伝子に働きかけて活性化することで、膵臓のβ細胞からのインスリン分泌を促し、血糖値を下げて糖尿病を改善に導く効果もある。さらに、脳の神経細胞を刺激して機能を活性化するほか、紫外線を浴びた皮膚では幸福感などをもたらすβエンドルフィンという神経伝達物質が作られるため、うつ病や認知症などの改善も期待できるのだという。

 ほかにも、紫外線を浴びてビタミンDを増やすことで排卵率が高まったり、精子の質が良くなるなど、生殖機能のアップにも役立つと本書。紫外線の量は地域によって差があるが、冬晴れの東京なら1日30分程度、北海道なら1時間、沖縄であれば15分を目安に紫外線を浴びる習慣をつけるとよい。ただし、60~70代以降は20代と同じ時間、紫外線を浴びても体内で作られるビタミンDの量は4分の1程度に減少する。健康長寿を目指すなら、中高年こそ積極的に紫外線を浴びたいものだ。

(主婦の友社 1300円+税)

【連載】長生きする読書術

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