「クモの奇妙な世界」馬場友希著

公開日: 更新日:

 クモというと、何となく気味悪がられることが多いが、イメージばかり先行してその実態は案外知られていない。本書は、そうした「クモを知らない多くの方々に、クモに親しみを持ってほしいという願いを込めて」書かれたもの。虫好きの中でも筋金入りの昆虫マニアを「虫屋」というが、ハエトリグモを「見た目のかわいさ、美しさだけではなく、行動もコミカルでかわいい……まさにクモのかわいさを凝縮したような、アイドル的存在」と評する著者はれっきとした「クモ屋」。

 現時点で世界には4万8088種のクモがいて、日本では約1700種近くが知られているという。クモといえば、糸を紡ぎ網を張るという特性で知られるが、網を張らないクモもいて、網にしても、よく見る円形のもののほかに、ハンモック形、ドーム形、棚形とさまざまある。あるいは糸を使って空を飛んだり、水中に潜ったり、地中にすんだり、投げ縄という道具を使って獲物を捕らえたりするクモもいるなど多種多様だ。

 交尾もユニークで、オスは他のオスの精子を入れられないよう、交尾したメスの生殖器を塞いだり破壊したりする。一方でメスは、無理に交尾を迫るオスを上顎で噛み砕くといった攻防が繰り広げられる。また、クモの体色のバリエーションの多さの秘密や、クモがいるだけで害虫の作物被害が減るし、その網は天然の防虫ネットの効果があることが明らかになるなど、クモの生態は実に不思議に満ちている。

 初めて知ることだらけだが、著者の「クモのことを知ってほしい」という情熱があふれる本書を読み終えた時には、知らず知らずのうちにクモに愛着が湧いている。そう、何事もイメージだけで判断せずに、きちんと「知る」ことこそが偏見を除く第一歩なのだ。<狸>

(家の光協会 1800円+税)

【連載】本の森

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本ハム伊藤大海が受けた甚大被害 WBC「本当の戦犯」は侍ジャパンのベンチだった!

  2. 2

    世界陸上マラソンで金メダル谷口浩美さんは年金もらい、炊事洗濯の私生活。通学路の旗振り当番も日課に

  3. 3

    高市首相が自衛隊派遣めぐり安倍側近と壮絶バトル→「クビ切り宣言」の恐るべき暴走ぶり “粛清連発”も画策か

  4. 4

    WBC惨敗は必然だった!井端監督の傲慢姿勢が招いたブルペン崩壊【総集編】

  5. 5

    渋野日向子が米ツアー「出場かなわず」都落ちも…国内ツアーもまったく期待できない残念データ

  1. 6

    暴力事件を招いた九州国際大付野球部の“ユルフン”体質 プロ球団は謹慎部員を「リストから抹消」か

  2. 7

    駐車トラブルの柏原崇 畑野浩子と離婚

  3. 8

    元プロ野球選手の九州国際大付・楠城祐介監督に聞いた「給料」「世襲の損得」「指導法」

  4. 9

    元横綱照ノ富士「暴行事件」の一因に“大嫌いな白鵬” 2人の壮絶因縁に注目集まる

  5. 10

    江角マキコさん「落書き騒動の真相」を初めて語る…人気YouTuberの配信に抗議