「長寿と画家」河原啓子著

公開日: 更新日:

 ピカソは付き合った女性のエネルギーを吸い上げるようにして素晴らしい絵を描き、富も名誉も思いのままだったが、「老い」は別だった。内からこみあげるエネルギーの減退を感じ、「20歳若くなれるなら、なんでもあげよう」とつぶやく。91歳で死ぬが、その半年前に描いた「自画像」は絶望を見つめるようなまなざしをしている。

 ロシア生まれのユダヤ人、シャガールは、亡命したアメリカでFBIの監視のもと、不自由で孤独な生活を送った。晩年は散歩や体操を欠かさず規則正しい生活をして97歳まで生きた。彼の絵が鮮やかで楽しげなのは、苦い思い出から逃れる護身術だったのかもしれない。

 長生きした15人の画家の最晩年から、その生き方と作品を読み解く。

(フィルムアート社 1800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    長瀬智也が国分太一の会見めぐりSNSに“意味深”投稿連発…芸能界への未練と役者復帰の“匂わせ”

  3. 3

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  4. 4

    元TOKIO松岡昌宏に「STARTO退所→独立」報道も…1人残されたリーダー城島茂の人望が話題になるワケ

  5. 5

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  1. 6

    西武にとってエース今井達也の放出は「厄介払い」の側面も…損得勘定的にも今オフが“売り時”だった

  2. 7

    立花孝志容疑者を追送検した兵庫県警の本気度 被害者ドンマッツ氏が振り返る「私人逮捕」の一部始終

  3. 8

    日吉マムシダニに轟いた錦織圭への歓声とタメ息…日本テニス協会はこれを新たな出発点にしてほしい

  4. 9

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  5. 10

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…