「黄昏坂 七人斬り」門田泰明著
夜の女たちの髪や化粧を整える「拵屋(こしらえや)」の銀次郎は、ある雪の降る夜に、なじみの居酒屋「おけらや」に物乞いにきた幼女と出会う。主人の六平によると、数日前から客の食べ残しを求めて訪ねてくるという。
見かねた銀次郎は、自ら金を出して弁当を作らせ、お京と名乗った幼女を送っていく。道中、聞きだしたところによると、お京と母親の命の恩人の女性が病に伏せっているという。3人が暮らすのは、武家育ちを思わせるお京の話しぶりからは想像もできない、極楽橋近くの夜鷹たちがたむろする雑木林だった。翌日、銀次郎は恩人でもある医者の北善に極楽橋への往診を頼む。
表題作のこの書き下ろしをはじめ、浮世絵師の宗次を主人公にした短編など著者の人気シリーズの神髄が楽しめる傑作選。
(徳間書店 860円+税)