「ミャンマー危機 選択を迫られる日本」永杉豊著/扶桑社新書

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 今年2月にクーデターを起こし、以後反対のデモを行う市民への弾圧をするミャンマー軍。多数の死者が出ているが、一体なぜこのような事態に陥ったのか。そして、実は日本にもミャンマーのクーデターは大きな影響を与えることを解説する。

 著者はミャンマーで月刊の日本語情報誌を発刊している。ひょんなことから「アジア最後のフロンティア」と呼ばれるミャンマーを訪れ、魅了された。また、中国人の人件費が高騰し、日系企業が別の生産拠点を求めて続々と進出したこともミャンマー在住を後押しした。

 ミャンマーといえば知っているのはアウン・サン・スー・チー氏が長年にわたって軟禁されていたことや、かつて「ビルマ」と呼ばれていた程度、という方も案外多いのでは。本書を読むとこれまでの同国の歴史と今回のデモの様子・ミャンマー人の声をはじめ、以下のことが分かる。

①なぜ、議会の少数派である軍が国を制圧できたか②ロヒンギャ問題を含めた国内での民族問題と、クーデターがもたらした意外な結果③欧米と中ロのミャンマーに対する姿勢の違い④あまりに日和見的な日本の対応⑤親日国が嫌日国になる恐れ⑥なぜミャンマー人は中国が嫌いなのか⑦なぜ、日本にいるミャンマー人が声を上げたのか。

 ここでは副題の「選択を迫られる日本」についての著者の記述を紹介しよう。日本はODAの面で最大の支援国であり、これが問題視されているそうだ。

〈国軍との太いパイプを持ち、世界で唯一軍幹部と交渉できると自負してきた日本政府だが、相変わらず深い懸念や非難を表明するだけで具体的な制裁にも踏み込んでいない。その姿勢にミャンマー人は、日本政府に対して持っていた強い期待が徐々に失望へと変わってきている。そして日本のODAが市民虐殺を繰り返す国軍の資金源になっているとして、ODAの即時停止を求める声が高まっているのだ〉

 また、ミャンマー軍が無慈悲にも市民を殺すことができるのは、もともとビルマ軍が旧日本軍とともに英国軍と戦ったことから、日本流の「上官の命令には絶対服従」のメンタリティーが残っていることが挙げられる。さらに、多数の民族・宗教の対立が存在する国だけに、自分たちの存在が国を守ると本気で信じている面があるようだ。

 本書を読むと日本で開催されたサッカーW杯予選で3本指を立てたミャンマー選手が亡命を求めた理由もよく分かるだろう。 ★★★(選者・中川淳一郎)

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