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「イスタンブールで青に溺れる」横道誠著

 複雑でストレスが多く、余裕のない上にコンプライアンス重視の現代。とかく問題視されがちなのが発達障害のある人々だ。

◇

 京都大学でドイツ文学を学び、研究者となった著者。

 ところが40歳で自閉症スペクトラム障害(ASD)との診断を受ける。これでわかったのが若い頃からの経験の数々。たとえば職業柄ドイツ語文法はできるのに会話ができない。スポーツも苦手で歩き方もユニーク。なのに気分が高揚してくると歩きながらでも人目を気にせず満面の笑みを浮かべる。ASDの持ち主は他人との「距離感」の取り方が人とは違い、何かにのめりこむと簡単に「ゾーンに入って」しまうのだという。

 本書はそんな障害を自覚した著者が世界中を旅してきた紀行文集。ただし名所案内やグルメガイドはなし。オーストリアの首都ウィーンでは毎日のように屋台の串カツ(シュニッツェル)を食べ、チェコのプラハを歩きながら「アルプスの少女ハイジ」を思い、ベルリンでは情けない思いをしたドイツ語の語学クラスを想起する。

 その折々にASDやADHD(注意欠如・多動性障害)の話が出てくる。著者も青年時代はADHD的な多動性と衝動性が強烈で、並外れてこだわりが強くなったり、他人への対抗心や嫉妬心が強烈になったという。自分がASDの診断を受けてからは、同じ障害がある仲間とともに、文学研究とは別に「当事者研究」を始めた経験が詰まった異色の本である。

(文藝春秋 1870円)

「増補改訂版 誤解だらけの発達障害」岩波明著

 能力は高いのに、それを職場や学校などの一般世間で発揮できない。これは典型的な発達障害の特徴だ。

 特に日本は他人の目を気にする社会風土が根強い。それゆえ発達障害はますます生きづらく、他方でホンネとタテマエを使い分ける世間は他人の不幸には無頓着でスルーする傾向が強い。

 また、ADHDやASDは親の育て方に原因があると誤解されることも多く、親子そろって苦しめられることになる。

 著者は昭和大医学部の発達障害専門医。それだけに本書の理解は深く、発達障害を描いた文学作品までていねいに紹介している。

 初版が好評を得たおかげで、今回はコロナ禍での状況を念頭にした増補改訂版の登場となった。

(宝島社 880円)

「発達障害の子どもに自立力をつける本」高山恵子監修

 発達障害の子を持つ親の苦労は人知れず。しかしその願いは子どもの自立という点で誰しも一致しているだろう。特に親が年をとると自分に万一のことがあったときに我が子はどうなってしまうのかという不安が、常に脳裏から消えなくなる。

 本書はそんな悩みに正面から応えてくれるガイドブック。監修者は既に20年以上の活動歴を持つADHD支援のNPO法人代表だけに、親の悩みを受け止める目次立てが目につく。特に思春期を迎えた以降の発達障害の子にいかに接するか。その目標は「困ったときに親以外にもSOSを出せること」という。精神面、生活面、経済面で親の支援なしに自立ができる。そんな状態がけっして夢ではないのだと励ましてくれるような本だ。

(講談社 1540円)

【連載】本で読み解くNEWSの深層

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