「中学生から大人まで楽しめる 算数・数学間違い探し」芳沢光雄著/講談社+α新書

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 評者は教育関連の本もいくつか書いている関係のせいか、大学生やビジネスパーソンから「これから統計や確率が重要になるということですが、文系なのでとても不安です。数学を中学レベルからやり直したいのですが、どうすればいいでしょうか」という質問をよく受ける。

 評者は「芳沢光雄先生の『新体系・中学数学の教科書』『新体系・高校数学の教科書』〔いずれも講談社ブルーバックス〕に取り組むことを勧める」と答えている。

 本書は芳沢氏が身の回りにある出来事から数学的思考の重要性を再認識させることを意図して書いた優れた作品だ。こんな例題がある。

<記録的な猛暑日で、午後2時の気温は40℃であったが、午後4時の気温は35℃に下がった。それを知ったA君は、「午後2時から午後4時までの間に、気温は12.5%下がったね」と発言した。/A君の発言が正しければ「正しい」と答え、問違っていれば、それを指摘しなさい。>

 読者はどう答えるであろうか。正解は「間違っている」だ。

<おそらくA君は、5℃下がったことから、/5÷40=0.125/と計算して、「12.5%下がった」と発言したのだろう。A君の発言が間違っていることを、統計で用いるデータの立場から説明しよう。西暦年数や温度は、データに関して足し算や引き算はできるが、何倍や何%増しなどの計算は意味をもたない。/実際、西暦2000年から西暦2010年にかけて10年増えた。それは、平成12年から平成22年にかけて10年増えたことと同じである。/一方、2010は2000の0.5%増しであるが、12の0.5%増しの数字は12.06である。>

 こういう数字同士を比較しても意味がない。
<西暦年数や温度のように、何倍や何%増しなどの概念はないものの、足し算や引き算の概念をもつ変数を間隔尺度という。間隔尺度に割合の概念を持ち込んで計算したことが、A君の間違いの本質である。>

 この例題について検討することによって、高校数学まででは出てこない間隔尺度という専門語と概念について知ることが出来る。数学に取り組む意欲を高めてくれる好著だ。 ★★★(選者・佐藤優)

 (2023年1月4日脱稿)

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