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嶺里俊介作家

1964年、東京都生まれ。学習院大学法学部卒。2015年「星宿る虫」で第19回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し、デビュー。著書に「走馬灯症候群」「地棲魚」「地霊都市 東京第24特別区」「昭和怪談」ほか多数。

紡がれていく恐怖 ~『異形コレクション』~

公開日: 更新日:

各国のエージェントが必ずチェックする稀有な作品集

 また、このシリーズは海外からも注目されていることも特徴。

 日本は各出版社の編集者が刊行の主導をしますが、海外では代理人(エージェント)制です。代理人が作家の作品と出版社を繋ぐ役割をします。『異形コレクション』シリーズに収録された作品は、各国の代理人たちが必ずチェックしています。

 つまり新人作家にとっては、自作が海外へ紹介されるチャンスなのです。

 かく言う不肖も、一度だけ声を掛けられて『異形コレクション』へ参加する機会に恵まれました。そのとき『異形コレクションLI 秘密』に収録された作品『霧の橋』は、中国の雑誌『科幻世界』の日本人作家による幻想文学特集号に、宮部みゆきさんや柴田勝家さんがたとともに翻訳掲載される栄誉を賜りました。自作品に海外のイラストレーターによる挿絵が付けられた経験は初めてでしたので、身体が震えたものです。

 これだから手が抜けない。

 最新刊は『異形コレクションLVII 屍者の凱旋』(光文社刊1320円)。

 本コラムでは既出のモチーフとなりますが、書き手にとっては実に頭を悩ませる主題です。

 なぜなら「亡者だが生者と同じように動く」のは汎用性があるアイデアですが、さらに「生者を襲う」が加わると、既存の映画やテレビドラマをイメージしてしまう。「ロメロ映画のスピンオフ」「他人の作品設定をパクっただけじゃないか」──こんな謗(そし)りを免れない。

 なので、オリジナリティーを出すための創意工夫が欠かせません。作家として、クリエイターとしての腕の見せどころです。

 収録されている作品から、より秀逸だと感じたものを2作紹介しましょう。

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